長時間ビデオ脳波モニタリング検査の目的は,①発作がてんかん発作か否か,②てんかん発作の場合は全般発作か焦点発作(部分発作)か,③焦点発作ならば起始はどこか,を明らかにすることである
抗てんかん薬が効かず,難治てんかんと判断された場合には,長時間ビデオ脳波モニタリング検査の適応となるが,検査の結果,見せかけの難治てんかんであることが判明する可能性もある
見せかけの難治てんかんの原因は様々だが,①てんかんの診断の誤り(非てんかん発作をてんかん発作と誤診している場合),②てんかん発作分類の誤り(全般発作と焦点発作の鑑別が誤っている場合),が多い
長時間ビデオ脳波モニタリング検査により,臨床症状を伴わない脳波上だけの発作や,外来の脳波検査で得られなかった発作間欠時異常が記録できる場合もある
てんかんの診断で最も重要なのは,時間をかけて詳細に病歴聴取を行うことである。てんかんは機能性疾患であり,発作のないときには神経学的異常を認めない場合が多い点で,器質性の脳疾患とは異なる。前兆を含めた発作の種類・進展形式・収束状況・発作後症状,それぞれの起きやすい時間帯・状況・頻度などについて,本人だけでなく直接の目撃者からも聞き出す必要がある。
発作を撮影したビデオも診断に有用である。最近では,カメラつきの携帯電話やスマートフォンも普及しているため,家族や友人に撮影を依頼するのもよい方法である1)。しかし,複雑部分発作(意識がなくなる発作)などでは,本人に発作時の記憶がない,または目撃者がいない,たとえいたとしても発作症状を的確に伝えられるとは限らない,など病歴聴取には限界がある。
また,目撃者によるビデオ撮影も,てんかんの局在診断に最も重要な発作の始まりを記録するのは困難な場合が多い。
発作を最も確実に記録・診断できる方法として,長時間ビデオ脳波モニタリング検査がある。この検査を行う部門は,てんかんモニタリングユニット(epilepsy monitoring unit:EMU)と呼ばれ(図1),ビデオ脳波計,ビデオカメラ,赤外線カメラを備えた病床であり,さらに記録したビデオ脳波データを保存するためのサーバー,判読・解析するためのコンピューターおよびそれらをつなぐネットワークを含めた総体である2)。
通常,数日~1週間程度の連続記録が行われ,電極は発作時の体動などで外れないよう医療用接着剤コロジオンで装着し,網目状のネットで頭部を覆うよう工夫している。記録中は,必要に応じて,発作を誘発するために抗てんかん薬を減量・中止したり,断眠負荷をかけたりしている。
検査の目的は,①発作がてんかん発作か否か,②てんかん発作の場合は全般発作か焦点発作(部分発作)か,③焦点発作ならば起始はどこか,を明らかにすることである。
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