株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

自己免疫性膵炎の治療における注意点【ステロイドの長期投与による副作用などに注意】

No.4854 (2017年05月06日発行) P.57

川嶋啓揮 (名古屋大学医学部附属病院消化器内科講師)

菅野 敦 (東北大学医学部消化器内科院内講師)

登録日: 2017-05-03

最終更新日: 2018-11-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 近年の自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)に関する知見の集積は目覚ましく,日本膵臓学会の「自己免疫性膵炎臨床診断基準 2011」によって診断に苦労することは少なくなりました。しかし,原因はいまだ不明であり,ステロイド維持治療をいつまで続けるか,再燃の危険因子,膵癌発症との関係など,不明な点もあるかと思います。最新の知見をふまえ,実臨床上の注意点について東北大学・菅野 敦先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    川嶋啓揮 名古屋大学医学部附属病院消化器内科講師


    【回答】

    まず,AIPの治療の適応を明確にする必要があります。「自己免疫性膵炎診療ガイドライン 2013」1)によると,ステロイド治療の適応は,「自己免疫性膵炎患者のうち,胆管狭窄による閉塞性黄疸例,腹痛・背部痛を有する例,膵外病変合併例などがステロイド治療の適応となる」と明示されています。

    ステロイドの維持療法はAIPの再燃の抑制に有効で,経口プレドニゾロンを5mg/日で維持すること,また維持療法の期間として3年間が1つの目安であることが,同診療ガイドライン1)に記載されています。最近,維持療法に関する重要な論文がわが国から2編発表されました。Masamuneらは,AIP症例のステロイド維持療法に関するランダム化比較試験を行い,ステロイドの維持療法がAIPの再燃抑制に有効であったことを報告しています2)。また,Kubotaらは,わが国におけるAIP多数例の後ろ向き検討の結果,維持療法の経口プレドニゾロンの量が5mg未満では再燃率が有意に上昇すること,また7年以上の長期にわたって維持療法を継続することで再燃率が抑制されることを報告しました3)

    残り589文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連物件情報

    もっと見る

    page top