近年,新規抗てんかん薬が次々と導入され,てんかん治療に大きな変化が生じている。
現時点では新規抗てんかん薬は難治性てんかんに対する併用療法としてのみ認可されているが,今後,単剤での使用も承認される見通しにある。
ただし第一選択薬は従来薬であり,全般てんかんにはバルプロ酸,部分てんかんにはカルバマゼピンが用いられる。
抗てんかん薬の歴史は1860年頃に登場したブロマイドに始まる。ついで1912年にフェノバルビタール,80年頃までにフェニトイン,カルバマゼピン,バルプロ酸など,いわゆる従来薬が開発された。バルプロ酸の後,開発の歩みはいったん鈍くなったが,その後,ラモトリギン,ガバペンチン,トピラマート,レベチラセタムなどの新規抗てんかん薬の開発ラッシュが訪れ,欧米では2000年前後に相次いで承認されたが,日本では06年以降,使用可能となった1)。
抗てんかん薬は大脳の神経細胞に作用し,その過剰興奮を抑制する。主な作用機序として,以下のようなものなどが挙げられている2)。
①電位依存性Naチャネルの阻害。
②γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:GABA)濃度を上げるか,GABA受容体における介在性Clの流入促進によりGABA機能を増強させ,抑制性神経を増強。
③T型CaチャネルのCaイオン流入阻害。
④グルタミン酸の遊離または受容体の阻害。
⑤脳内の炭酸脱水素酵素を阻害して局所のCO2を貯留させることで陰イオンの移動を阻害。
⑥電位依存性Caチャネルの阻害。
⑦シナプス小胞蛋白(synaptic vesicle protein 2A:SV2A)に結合し,シナプス小胞の放出を減少させる。
たとえば従来薬のカルバマゼピンは①,バルプロ酸は②と④を有する。新規薬のうち,ラモトリギンは①と④に加えて⑥を有する。さらにトピラマートは⑤,レベチラセタムは⑦を従来薬にはない独自の作用機序として有している2)。
新規抗てんかん薬は単剤でも十分有効であるが,わが国では他剤との併用でしか認可されていない。ただし,ラモトリギンとレベチラセタムは単剤での臨床治験が進行しており,間もなく単剤での使用が認可されると思われる。
新薬としては,カルバマゼピン類似の構造を持つオクスカルバゼピン,新規構造のトリアゾール誘導体を有するルフィナマイド,選択的AMPA(α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸)型グルタミン酸受容体阻害薬であるぺランパネル,ナトリウムチャネル阻害薬のラコサミド,γ-アミノ酪酸(GABA)分解酵素阻害薬であるビガバトリンの臨床治験が進行している3)。
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