全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)は従来,不安神経症の名で呼ばれたものにほぼ相当する「不安障害」の中の一型である。多数の出来事や活動,たとえば仕事の責任,経済状態,家族の健康など,多くは日常的な生活環境などについての慢性(少なくとも6カ月以上)で過剰な不安と心配(予期憂慮)を特徴とする。
不安や恐怖の対象が特定のテーマに限定される恐怖症,いわゆる社交不安障害(対人恐怖),また高所恐怖,閉所恐怖などとは異なり,様々な事柄や事態に対する漠然とした不安の亢進を認める。また,自律神経系の過覚醒状態を中心とする身体症状(易疲労,筋緊張もしくは痛み,集中困難,睡眠障害,落ちつきのなさ,感情の高ぶり,リラックスできないなど)を伴う1)。ただし,不安や恐怖の内容は訂正不可能な妄想レベルにはなく,基本的には現実に起こりうる将来や事態に向けられたものにとどまる。生涯有病率は5%とされ,男女比は1:2と女性に多く,発症年齢は成人期初期が多い。
神経生物学的にはセロトニン,ベンゾジアゼピン(BZ),その他の関与が報告されている。長期薬物療法については十分な研究が行われていないが,不安症状の短期的な治療としてBZ系抗不安薬,および選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)または三環系抗うつ薬の併用の有効性が報告されている。薬物療法の期間は6~12カ月を目安とするが,一般に経過は慢性で長期にわたり,そのため内服期間も長期となりやすい。BZ系抗不安薬を使用するかどうかは,熟慮の上で決定すべきである。使用すると決めた場合にも,可能な限り服薬期間を限定すべきであり,漫然とした内服は推奨されない。
なお,抗うつ薬は依存性が乏しい反面,急激な中断により中断症候群(めまい,吐き気,発汗,振戦,不眠など)を生じるリスクがあるため,定期的内服を前提とするが,減薬または中断する際は注意深く漸減する。また,長期の治療には,憂慮に対する認知的介入と行動療法のリラクゼーション訓練を組み合わせた心理社会的療法も治療効果が大きい。
●文献
1) 山内俊雄, 他編:専門医をめざす人の精神医学. 第3版. 医学書院, 2011, p472-3.