ナルコレプシーは「居眠り病」とも呼ばれる病気で,過眠症の一種に分類される病気である。わが国での有病率に性差はなく,0.16~0.18%と言われている。
臨床症状としては,①日中の耐え難い眠気,②繰り返す居眠り,③睡眠発作の症状が必発であり,特に注意や集中を必要とされる重要な会議などの状況下においても,居眠りを繰り返してしまう症状を特徴とし,場合によっては大きく社会生活にも影響を及ぼす。
ついで,必発ではないものの出現頻度の高い症状としては,④カタプレキシー(情動脱力発作)があり,覚醒時に笑いや驚愕といった強い情動により,突然に一過性の全身または身体の一部分の筋肉の緊張度が低下または消失してしまう症状を特徴とする。
ナルコレプシーは,主に①~④の症状を主症状とする。その他,⑤睡眠麻痺と呼ばれる「金縛り」に相当する一過性の全身の脱力症状や,⑥入眠時幻覚と呼ばれる就寝直後に体験する鮮明な幻覚を認める場合もある。明確な病因は不明であるが,オレキシン神経系の関与が指摘されている。
診断に用いる検査としては,①夜間ポリソムノグラフィー(polysomnography:PSG)を用いることが多く,入眠後15分以内に入眠時レム期(SOREMP)と呼ばれるレム睡眠の出現を認めることが多い。その他,②反復睡眠潜時検査(multiple sleep latency test:MSLT)と呼ばれる検査を用いることも多く,平均睡眠潜時は多くの場合8分以内である。
治療としては,生活面において「十分な夜間睡眠をとり,休憩時間には積極的に仮眠をとるように」と指導する。薬物療法における根治療法はなく,日中の過度の眠気に対しては,中枢神経刺激薬としてモダフィニル(第一選択薬)やメチルフェニデート,ペモリンを使用する。カタプレキシーやその他のレム睡眠関連症状に対しては,レム睡眠抑制目的にて三環系抗うつ薬であるクロミプラミンを使用する場合もある。
●参考文献
▶ 日本睡眠学会:ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン. 2013.