IgG4関連疾患は全身の様々な臓器にIgG4陽性形質細胞が浸潤し,腫瘤形成や狭窄症状をきたす疾患である。この全身疾患が胆管にも発症することは以前より知られており,IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-related sclerosing cholangitis:IgG4-SC)として,わが国における診断基準も作成されているが1),比較的稀な疾患であることから,その全体像は明らかになっていなかった。筆者らは,2015年に全国の主な施設でアンケート調査を行い,534例のIgG4-SC症例を集計し,臨床像や予後について報告した2)。
IgG4-SCは男性に多く,診断時の平均年齢は約66歳で,若年者には稀な疾患であった。黄疸を発症する症例が全体の約1/3と最も多い。原発性硬化性胆管炎(PSC)とは異なり,腹水や静脈瘤など非代償性肝硬変症状を発症する症例はほとんどない。84%の症例では血清IgG4値が上昇しており,診断の助けになる。画像では肝内外の胆管拡張を呈し,胆管癌・膵頭部癌とPSCとの鑑別が必要である。90%近くの症例で自己免疫性膵炎を合併している。副腎皮質ステロイドが著効し,予後はきわめて良好である。
中高年の男性で,黄疸ないし胆汁うっ滞を呈し,画像上で肝内外の胆管拡張がみられる場合は,まず悪性疾患を考えるところである。ただ,同時に鑑別疾患としてIgG4-SCの可能性を念頭に置き,一度は血清IgG4を測定してほしい。
【文献】
1) Ohara H, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2012;19(5):536-42.
2) 田中 篤, 他:胆道. 2016;30(2):304-11.
【解説】
田中 篤*1,滝川 一*2 *1帝京大学内科教授 *2同主任教授