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(2)今,必要な褥瘡におけるポケット形成機序の理解 ─坐骨部 [特集:今,必要な褥瘡ケアの知識]

No.4747 (2015年04月18日発行) P.26

前重伯壮 (神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • 座位では大腿部が座面に固定されるため,坐骨は股関節を回転軸として前後左右に位置を変化させ,ずれが発生する

    皮膚と骨のずれのみでは,皮下組織は損傷されないが,圧迫された状態でずれが発生することにより,虚血状態が増悪して壊死領域が拡大するため,ポケットの形成予防には圧迫とずれ両因子の管理が必須である

    車椅子座位,いざり動作,移乗動作,トイレ動作などの基本動作および日常生活動作の中に坐骨部の圧迫およびずれ発生の機会があるため,患者の生きがいに配慮した上で,動作方法の工夫を提言しなければならない

    1. 座位における坐骨の動きと外力

    坐骨部の皮膚および皮下組織は,座位姿勢を保持すると必ず座面と坐骨に圧迫される。その圧迫が持続することにより,組織が虚血に陥り,壊死して潰瘍を形成する。静止した座位であれば,壊死する領域は限定されるが,臥位と比較して座位は活動的な姿勢であるため,生活の中で坐骨に動きが生じ,壊死領域が拡大する。これにより,坐骨褥瘡のポケットが形成される。
    骨盤が大腿骨に連結していない状況を想定してみると,起立した骨盤は,坐骨を起点にして前後左右に傾斜するため,座面と坐骨の位置関係は変化しない。しかし,大腿骨が連結している状態では,接触面積の大きい大腿部が静止摩擦力によって座面に固定されるため,骨盤の回転軸は股関節となる。つまり,骨盤が前方に傾斜するとき,股関節を軸として前方に回転するため,骨盤の下端に位置する坐骨は後方に移動する。骨盤を正中位に戻すと,坐骨は前方に移動する(図1)。
    一方,骨盤を左右に傾斜するときには,傾斜側の大腿部が座面に固定された状態で,骨盤が側方に傾斜する。このとき,傾斜側の股関節を回転軸として,坐骨が左右に移動する。このような坐骨の動きを認めるときに,坐骨部が荷重されていなければ,坐骨の位置が変わるだけで組織を傷害しない。しかし,極度の仙骨座りでない限り,座位姿勢では坐骨に圧迫が加わっているため,広範囲の領域が壊死することになる。つまり,褥瘡のポケットを予防,治療するためには,まず圧迫を適切に管理することが必要であり,加えて,坐骨部と坐骨部周囲組織のずれを軽減させることが求められる。

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