より低侵襲に脊椎を安定化する手技を最小侵襲脊椎安定術(MISt,ミスト)という
MIStの利点は,小切開,少出血,創部痛の軽減,低感染率,遺残腰痛の軽減,早期離床などである
MIStの適応となる疾患には,腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性側弯症などの腰椎変性疾患,骨粗鬆症性椎体圧潰・圧迫骨折,転移性脊椎腫瘍,感染性脊椎炎などがある
MIStの代表的手技にはMIS-TLIF,MIS-long fixation,CBT,XLIF,OLIF,BKPなどがある
近年の超高齢社会の到来により,椎間板の変性や骨の変形など加齢による退行性変化を基盤とした脊椎変性疾患が急増している。多くの脊椎変性疾患は保存的に治療されるが,重度の脊柱変形や神経麻痺症例では外科的治療が奏効する。外科的治療は,神経の圧迫を取り除く除圧術と脊椎の不安定性や変形を治療する固定術の2つに大別される。
これらの手術手技の低侵襲化は小皮切,少出血量,創部痛の軽減,低感染率,早期社会復帰などを可能とする。わが国の最小侵襲脊椎手術は,1999年に導入された内視鏡下腰椎椎間板摘出術(microendoscopic discectomy:MED)による除圧術によって普及してきた。一方,特殊なインプラント設置や骨移植などを行う複雑な手技である固定術の低侵襲化の開発には時間を要していた。しかしながら,近年のデバイスやインプラントの発達により固定術の低侵襲化が現実のものとなり,様々な手術手技が臨床現場で実施されつつある(表1)1)。
これらの手術手技に共通する基本概念は,より低侵襲に脊椎を固定あるいは制動・安定化する手技であり,最小侵襲脊椎安定術(minimally invasive spine stabilization:MISt,ミスト)と呼ばれている2)。今日,MIStは,腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性すべり症などの腰椎変性疾患のみならず,脊椎圧迫骨折や脊椎破裂骨折などの外傷,転移性脊椎腫瘍,感染性脊椎炎など様々な病態に応用されている1)。
MIStの利点として,小切開,少出血,創部痛の軽減,低感染率,遺残腰痛の軽減,早期離床などが挙げられる。特に高齢者では,全身予備能の低下や内科的既存疾患,骨粗鬆症,脊柱変形などの合併により,外科的治療にリスクを伴うことが稀でないため,MIStは良い適応である。今後も様々なMIStが臨床現場に導入されることが期待されている。
本稿では,脊椎外科領域で最もトピックとなっているMIStの代表的手技について概説する。
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