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双極Ⅱ型障害【軽躁が気づかれず,うつ病と診断されていることが少なくない】

No.4861 (2017年06月24日発行) P.51

大屋 大 (信州大学精神医学)

鷲塚伸介 (信州大学精神医学教授)

登録日: 2017-06-21

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双極性障害という病名は一般医家にも浸透してきた感があるが,これにはⅠ型とⅡ型が存在することはまだあまり認識されていない。1回でも激しい躁状態を呈すれば,うつ病相がなくても双極Ⅰ型障害と診断する。一方,双極Ⅱ型障害は,軽躁とうつの両方のエピソードがみられて初めて診断することができる。

DSM-5では,軽躁病について「気分の障害は,社会的または職業的機能に著しい障害を起こすほど,入院が必要であるほど重篤ではない」と記載されているが,「正常」と「病気」の区分がきわめてあいまいであることがおわかり頂けよう。うつ病相が確認されないと診断できない所以である。

しかし,うつ病相があれば診断は容易というわけでもない。双極性障害の2/3はうつから発症し,この時点では「うつ病」としか診断されない。そして,その後軽躁病が出現しても病的気分ではなく「もともとの性格」と思われ,「うつ病」として治療が続けられることが少なくない。

双極性障害の患者に抗うつ薬を用いると,経過が不安定になる場合があることから,Ⅰ型,Ⅱ型を問わず抗うつ薬単独使用は推奨されていない。ところが,最近は軽躁がそれほど目立たない双極Ⅱ型障害には,抗うつ薬治療に肯定的な研究も出てきており,使用の可否について議論が続いている。

ともあれ,専門医の慎重な観察下での治療が望ましいことから,双極Ⅱ型障害を疑ったら専門医への紹介を急いだほうがよいと思われる。

【解説】

大屋 大*1,鷲塚伸介*2 *1信州大学精神医学   *2同教授

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