(高知県 F)
細胞外カリウムイオン(K+)濃度は,腎尿細管などの機能によって狭い範囲(3.5~5mEq/L)に保たれており,細胞内K+濃度(約150mEq/L)の3%程度しかありません。したがって,心筋細胞膜のK+チャネルが開くと,基本的にはこの濃度差によって,心筋細胞内から細胞外へK+の流出が起きます。
ナトリウムイオン(Na+)チャネルやカルシウムイオン(Ca2+)チャネルが閉じている状態でK+チャネルが開くと,K+の流出によって細胞外で過剰となった正電荷と,細胞内に残され過剰となった負電荷は,コンデンサ(キャパシタ)の性質を持つ細胞膜(脂質二重層)の両側面に互いに引き合う形で蓄えられ,細胞膜の外側を基準とする内側の電位(膜電位)は負の値となります。このような状態を電気生理学的に「膜が分極している」と言います。
ヒトの1個の心筋細胞の静電容量はおよそ100~200pF〔ピコ(p)は10-12を示す〕であり,わずかな電荷の移動で大きな膜電位が発生します。K+の流出によって発生する負の膜電位は,静電的な力によって逆にK+を細胞内へ引き込むように働くため,両者(濃度差と電位差)が釣り合うとK+の正味の移動が起こらなくなります。このときの膜電位がK+の平衡電位と言われるものであり,心室筋や心房筋の静止膜電位はNa+チャネルやCa2+チャネルが閉じた状態でK+チャネルが開口することによって,細胞内外K+の濃度差と釣り合う大きな負の値(約-90mV)に維持されます。
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