「実地医家のための会」創設者で、病人中心の医学確立に多大な貢献をした永井友二郎氏(5月8日逝去、98歳)がこの世を去って2カ月。実地医家のための会のメンバーを中心に「永井友二郎先生を語る会/偲ぶ会」が9日、東京医科歯科大で開かれ、故人の思い出を語り合った。
永井氏は1957年、東京都三鷹市で開業。「患者に寄り添う医療」「病気ではなく全体を診る医療」を目指し、開業医が自らの問題を討論・発表する場をつくろうと、63年、原仁氏、浦田卓氏、村松博雄氏とともに実地医家のための会を設立した。この会が母体となって、78年に日本プライマリ・ケア学会が誕生、現在の日本プライマリ・ケア連合学会へと発展していった。
スライドとともに故人の足跡を振り返った実地医家のための会世話人代表の石橋幸滋氏は、永井氏が開業医の道を選んだのは、大学病院勤務時代に先輩医師から「永井君の診察は病人の話を聞きすぎたり、無駄な話をしている。学問的な医師はそんなことはしないものだ」と非難されたのがきっかけと紹介。
前世話人代表の矢吹清人氏は「無から有は生じないが、思い浮かんだことは実現する。町の一開業医、永井友二郎先生の脳細胞に浮かんだことが、実地医家のための会を誕生させ、日本プライマリ・ケア学会を生み、日本の医学界に人間の医学の理想を広め、また爽やかな良医の風を起こした。この先生の強い意志と情熱こそが、神様から授かった魔法の杖のように思えてならない」と語り、故人の功績をたたえた。
「語る会/偲ぶ会」には遺族も参加し、長男の永井眞氏は「父は実地医家のための会を心から愛していた。仲間に恵まれた本当にいい生涯だった」と挨拶した。