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見たことがない病変、その後[プラタナス]

No.4868 (2017年08月12日発行) P.1

長田道夫 (筑波大学医学医療系腎・血管病理学教授)

登録日: 2017-08-10

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  • 腎臓には糸球体という血液から尿を濾過する装置があり、3つの細胞からできている。そのうちの1つであるポドサイト(足細胞)は、濾過を維持する大事な細胞である。

    1991年、留学先のハイデルベルク大学から帰国してしばらくしてのカンファレンスで、「わからない」と提示された病変に言葉を失った。留学中に、足細胞は終末分化細胞で増殖しないという結論を得て、これを固く信じていたが、示された病理写真には、足細胞らしい著しく増殖する細胞が写っていた。

    これは後にcollapsing variant(CV)という、巣状分節性糸球体硬化症の亜型で、わが国では最初の症例であることがわかった。CVの世界で最初の報告は1986年に米国から行われた、HIVに併発する6例であったが、疾患概念となったのは先のカンファより後の1996年である。当時著名な学者から、この病気は足細胞が異常増殖した結果だとする論文が出され、世界中がこれになびいたが、私にはそうは思えなかった。増殖した細胞には足細胞のマーカーがまったく発現せず、やはり足細胞ではないと論文を書いたが、足細胞が形質変換したためだというreviewerに苦労した。

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