No.4688 (2014年03月01日発行) P.17
長尾和宏 (長尾クリニック)
登録日: 2014-03-08
最終更新日: 2017-09-08
今春の診療報酬改定の概要を、一町医者の立場から鳥瞰してみたい。超高齢社会や2025年問題に対応するために、病院完結型から地域完結型への転換を促す強烈なメッセージが盛り込まれていると感じた。ただ充分に練り込めていない部分もあり混迷が予想されるので、医療界で早急に議論を重ねて、相当工夫した疑義解釈が出ることを期待する。
消費税への対応としては、初診料12点増、再診料3点増と各々アップする。しかし消費税は本来、事業者ではなく最終消費者が負担をするもの。医療は社会保障であり「商品」ではない。消費税政策の誤りが事業者の医療機関の負担に転嫁されるという根本的矛盾は依然解決されていない。
病院の外来を専門外来に特化し、一般外来を診療所へ移行させるため、大学病院や大病院(500床以上)の初診料・外来診療料算定では患者の「紹介率・逆紹介率」のハードルを極端に上げた。紹介率は外来患者数を分母に取るため、一般患者の整理と、治療連携のための診療所の大病院への登録関係が強化されることになろう。7対1要件の厳格化と13対1地域包括ケア支援病棟の新設、在宅復帰の促進という方向性も時代の必然だろう。在宅復帰率7割が指標とされるなど、地域包括ケアシステム推進のための改定であると思う。
主治医機能の評価としては、地域包括診療料/加算という新カテゴリーが登場した。まず出来高点数として「地域包括診療加算」が20点である。算定要件は、(1)高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾病のうち「複数を診る」、(2)関係団体主催の研修を修了した担当医の専任、(3)計画的な医学管理、(4)患者の受診医療機関すべての把握と服薬管理、(5)自院検査と院内処方、(6)健康管理・健診勧奨、(7)主治医意見書ほか介護サービス提供─などである。研修要件は2015年4月適用で、その間は暫定運用となる。
この点数は院内処方が原則とのことだが、時代に逆行してはいないか。院外処方の場合は「24時間対応の薬局」との連携が要件となるが、大手薬局チェーンでないと無理ではないのか。また、この加算を算定できる診療所は24時間対応の「時間外対応加算1」または夜間対応の「同加算2」を算定する必要がある。加算を算定している診療所は1が9197カ所、2が1万5555カ所(2012年)と対象は限られている。ちなみに、診療所は全国10万、うち内科系は6万、うち在宅療養支援診療所(在支診)は1万3000施設である。
一方、包括点数としては「地域包括診療料」1,503点が新設された、24時間在宅医療に応じる在支診の中でも医師が3人在籍する「強化型」が対象であり、全国に359施設しかないため算定する診療所は僅かであろう。もし「常勤医3名」の縛りを、強化型在宅療養支援診療所における「3医療機関での協働」でも可能であるという解釈になれば、外来・在宅を問わないシームレスな地域連携体制が構築される可能性を秘めている。24時間体制の地域医療を目指すためにはもうひと工夫必要だ。
残り1,410文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する