認知症ケアパスの組み立ての視点は,大きく「個々の認知症の人が歩むケアパス」「地域の認知症ケアパス」の2つに整理される。個々の認知症の進行(個々の認知症の人が歩むケアパス)に合わせて,地域の支え(地域の認知症ケアパス)が段階的に示される必要がある
認知症ケアパスを組み立てる場合,比較的認知症の症状が軽度の場合は,地域のつながりやボランティアによる支援,認知症が進行した場合には介護保険サービスによる支援が増える傾向がある
認知症ケアパスと介護保険サービスは,それぞれが独自に機能するものではなく,認知症ケアパスの中に,医療サービス・介護保険サービス・生活を支えるための支援が含まれると考える。認知症ケアパスは,それら様々な支援を含む,認知症の人のための包括的支援の流れである
介護保険サービスだけで認知症の人を包括的に支援することは難しく,むしろ地域全体で支えていくことが望ましい。そのためには,介護保険サービスにとどまらず,できる限り地域のつながりを保ち続けることが重要である
わが国の高齢者人口は増加の一途をたどっている。特に後期高齢者における認知症の発症率が高く,認知症の人を地域でいかに支えていくかは,地域福祉における重要なテーマである。厚生労働省は2012年6月に「今後の認知症施策の方向性について」の報告書を発表。これを受け,「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を策定し,その7つの柱の1つ目として「標準的な認知症ケアパスの作成・普及」を掲げた。
そもそも「ケアパス」という言葉は「care pathway(s)」という言葉を語源としており,考え方や訳し方によっていろいろな意味合いにとらえられる言葉である。そこで本稿では,厚生労働省が上記のオレンジプランや2015年1月に発表した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」において示している認知症ケアパスに焦点を当て,その考え方を説明するとともに,その一例として東京都町田市で作成された認知症ケアパスを紹介したい。
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