認知症高齢者,知的・精神障害者など,判断能力に不安のある人の生活を支える制度を上手に活用するためには,本人・家族を支える関係者がしくみを正しく理解する必要がある
認知症になっても何もわからなくなるわけではないため,個別の能力を正しく判断する必要性がある
成年後見制度で安易に代理行為をする危険性を見直す必要がある。後見人は「本人が意思決定をする」ことを支援する応援者でなければならない
認知症を支える側の負担に寄り添いつつも,本人のための権利擁護のしくみが,ほかの誰かの都合で利用されていないか見きわめる必要性がある
現在の権利擁護のしくみがつくられた大きな契機は,2000年の介護保険制度導入である。それまでは,福祉サービスの利用が必要な人に対しては,行政がその人に合ったサービスを措置として決めていたが,介護保険制度により,サービスの利用者が選択し自ら契約するしくみとなった。
しかし,本人意思が尊重されるようになった一方で,その判断が1人では難しい人が多数いることが想定されたため,成年後見制度(以前の禁治産制度を改正)と日常生活自立支援事業が生まれた。
高齢者の日常生活には,介護保険や医療保険などの役所の書類,年金受給の書類など,手続きが溢れている。
しかし,目の衰え,様々な体の不調がある高齢者にとって,届いた書類の細かな文字の説明書きを読むことや,内容を理解すること,正しく記入すること,返送をすることは,どれもが非常に厄介である。認知症の症状がある人にとってはなおさら,自分で判断をし,それらの作業をこなすことは難しい。中には開封することさえ億劫で,そのまま放置され,何年分もの書類が積み重なっている状況をよく目にするが,申請主義の現在の制度では,たとえば本来還付されるはずのお金の申請が放置されるなど,本人に不利益が生じる可能性がある。
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