中医協の答申後、医療団体代表者と中医協の支払側委員がそれぞれ会見を開き、2014年度診療報酬改定についてコメントした。
日本医師会の横倉義武会長は「メリハリの利いた改定」と評価する一方、薬価引下げ分の財源を診療報酬本体から切り離した今回の対応を強く批判。一方、支払側の白川修二健保連専務理事は基本診療料を中心に上乗せした消費税増税の対応に不満を示した。
会見の要旨は以下の通り。
日本医師会・横倉義武会長 全体改定率0.1%増という厳しい国家財政の中で社会保障・税一体改革の第一歩を踏み出した。さまざまな項目を適正化した一方、7対1病棟の基準見直しに伴う受け皿としての地域包括ケア病棟の創設や、主治医機能、有床診療所、在宅医療への手当など地域に密着した医療の提供に評価がなされ、将来の病床展望について方向性が示された。少ない財源の中でメリハリの利いた改定になったという印象。
消費税については、引上げの補塡がなされた事は評価ができる。10%引上げ時までの1年半の対応であることを踏まえ、公平かつシンプルな対応策として、(今回の)基本診療料への配分が妥当。ただ、現行制度は抜本的な見直しが必要。患者負担を増やすことなく税制による抜本的な見直しを要望していく。
日本病院会・堺常雄会長 7対1病棟を9万床減らし、その受け皿を地域包括ケア支援病棟にするというが、現場がどう判断するか。医療法の病床機能報告制度ともあわせ、点数を詳細に検討して方向性を見出したい。
全日本病院協会・猪口雄二副会長 7対1病棟を算定できる病院は数が限られると思う。具体的評価は通知を見て判断したい。
日本精神科病院協会・山崎學会長 多くの精神科のメニューが入ったが、要件が厳しい。4月施行の改正精神保健福祉法に基づき、精神科病院の機能分化と地域移行という名目に沿った改定だと思っていたが、これでは算定できない。
日本医療法人協会・加納繁照会長代行 職員のベースアップにはつながらない。医療界だけアベノミクスから外されたのであれば問題。
全国自治体病院協議会・邉見公雄会長 自治体病院の経営に資する目玉の少ない改定で非常に不満。財務省が薬価引下げ分の財源を何の理由もなく取り上げたことはルール違反だ。
消費税の損税問題も解決されなかった。自治体病院では増税による新たな負担増のうち、初・再診料や入院基本料への上乗せで補塡されるのは半分。これでは新しい機械の購入はほぼ不可能で、今の医療を続けることすら難しい。
──消費税10%引上げ時の対応をどうするか。
横倉会長 医療界では長年、課税軽減税率が検討されてきたが、その他の方法も含めて、医療機関に過度な負担をもたらさず、国民にも負担にならないような対応を模索したい。
──薬価改定による財源が診療報酬本体から切り離されたことをどう受け止めるか。
横倉会長 医療費のなかで薬剤費だけを切り分けることはおかしいので、薬価引下げ分を医療費に戻すよう強く主張していく。今回も強く主張したが、消費税増税でさらに国民負担を増やしたくない政府の強い思いがあり、突破できなかった。最終的に、消費税補塡分と薬価引下げ分が同じパーセンテージというトリックがあり、我々の主張が十分理解を得られない環境があった。今回は特例的なことなので、次回改定に向けてしっかり理論構築していきたい。
日本医師会・中川俊男副会長 誠に遺憾で、極めて異例だ。その最大の原因は、予算編成において、消費税対応分と通常改定の予算立ては別々にするよう要請したが、聞き入れてもらえなかったため。政府与党も混乱したのではないか。
──外来包括点数の「地域包括診療料」の導入で現場が混乱することはないか。
中川副会長 日医として外来包括化を容認したことでは決してない。横倉会長が常日頃より主張している「かかりつけ医の評価」の第一歩を踏み出すということ。算定要件は簡単ではないが、道筋ができたと思う。(現場に)しっかり説明していきたい。
──社会保障制度改革国民会議の報告書が求める「緩やかなゲートキーパー機能を備えたかかりつけ医」を形にしたといえるか。
横倉会長 かかりつけ医はゲートキーパーの一部を担うかもしれないが、本来の役割はそういうものではない。国民が病気になったとき、また健康についての相談に対応する役割を十分に評価していただきたいということだ。
──地域包括ケア病棟の点数について、移行の余地があると考えるか。
猪口副会長 非常に微妙な点数。通知が出てから、どこまで自由裁量があるか見えないと、皆、判断できないだろう。
健保連・白川修二専務理事 改定率がプラスとなり非常に残念だ。消費税対応分については、消費者物価への影響を加味しておらず、現場では控除対象外消費税を上回る補塡となるとの懸念がある。ただ、薬価引下げ分を本体に充当しなかった点は高く評価する。次回以降も本体と薬価の切り離しが踏襲されることを期待する。
──地域包括診療料の印象と点数について。
白川専務理事 外来医療は基本的に包括でやるべき。主治医機能の導入自体は反対しないし、国民の間に根付くよう医療側には努力をしてもらいたい。ただ1503点という点数は少し高い印象だ。最終的には地域包括診療加算も包括点数に一本化すべき。
──消費税増税の対応について。
白川専務理事 控除対象外消費税が生じるのは、ほとんどが検査機器などの設備投資だ。設備投資の多い病院に不利で、診療所に有利という印象を持っている。
──消費税10%引上げ時の最良の対応は。
白川専務理事 最も重要なのは、最終消費者が負担する仕組みにすること。保険者・患者負担に対して財政的措置が必要で、そのためには、薬価切り下げを改定の中間年もやるべき。
──在宅医療など不適切事例への対応は十分か。
白川専務理事 どこにも網の目を潜る人はいて、そのために診療報酬が複雑化することを危惧する。厚労省は人手不足で監視体制が弱い。保険者として間接的な監視に貢献したい。