▶認知症の有病者数は、2025年には700万人に達すると推計されている。「700万人時代」を乗り切るべく、認知症サポート医、多職種による初期集中支援チームなどの養成・整備が、行政・医療界を挙げて全国的に展開されている。ところで、認知症への対応が進む一方で、既に「700万人時代」を迎えている別の問題がある。発達障害だ。
▶厚生労働省によると、発達障害者の数は疑いの人を含めて700万人。小中学生の約6.5%に発達障害の可能性があるとする文部科学省の調査報告もある。芸能人のカミングアウトやメディアの啓発によって発達障害の認知度は上昇しているが、医療・福祉のニーズに供給が追いついていない。
▶総務省の調査では、発達障害の専門医療機関の初診待ち期間は平均3カ月以上、中には10カ月という施設もみられる。当事者・家族の生活や就労に関する支援を行う「発達障害者支援センター」の相談件数も昨年度は7万4000件を上回った。診療・支援を巡る体制はパンク状態であると言える。
▶こうした状況に対し、厚労省は2018年度概算要求で、発達障害児・者の支援施策の予算として、今年度当初予算比で3倍近い5.9億円を計上した。発達障害を診療・支援できる医師を養成し、専門医療機関の確保を図るほか、「雇用トータルサポーター」を新設して就労支援も強化するとしている。
▶来年4月からは企業が障害者の法定雇用率の中に精神障害者を含めることが可能となり、精神障害の手帳を持つ発達障害者の雇用も増える可能性がある。非専門医でも産業医を務めていれば、対応を求められる場面も出るだろう。非専門医を支える医師や多職種の養成を含め、もう1つの「700万人時代」に対応できる体制構築が望まれる。