1990年代後半から始まった新しいタイプの抗精神病薬,抗うつ薬の臨床現場への導入は精神疾患の薬物治療の様相を一変させたと言っても過言ではない。一方で,統合失調症患者の心血管疾患による死亡率は一般人口の約2倍に上ると報告され,こうした背景には肥満や糖脂質代謝異常などメタボリック症候群の頻度が高いことが推察されている。また,選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの新しいタイプの抗うつ薬は不快な副作用の低減,臨床適応の幅広さを獲得した一方で,薬物相互作用,中断症候群,賦活症候群といった新たな副作用もクローズアップされてきた。本特集においては向精神薬がもたらす身体合併症について,最新の知見を含めて諸先生方にまとめて頂いた。日常の臨床にご活用頂ければ幸いである。
1 向精神薬による糖脂質代謝異常
新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野 田尻美寿々
新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野教授 染矢俊幸
2 向精神薬による内分泌障害
弘前大学医学部附属病院神経科精神科 坂本由唯
弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座准教授/臨床教授 古郡規雄
3 向精神薬による循環器障害
獨協医科大学精神神経医学講座講師 藤井久彌子
獨協医科大学精神神経医学講座准教授 尾関祐二
獨協医科大学精神神経医学講座主任教授 下田和孝