No.4875 (2017年09月30日発行) P.75
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2017-09-27
最終更新日: 2017-09-26
あるはずの物がよく消える。以前はどうして無くなったのか思い悩んでいたが、歳をとって消失頻度が増えるにつれ、次第に不思議とは思わなくなってきた。あぁ、あれはきっと寿命やったんやな、とか、気分を害してどこかへ隠れとるんやろ、とか。ある種の悟りである。逆に、無いはずのものが忽然と現れると、心底びっくりする。
今では考えられないが、30年以上も前、研究を始めた頃のマウス飼育施設は、密閉度が低くて、外からの闖入も自由自在だった。毎夏に一度くらいの頻度だが、マウス飼育ケージの床敷きを交換する時、5~6匹のマウスを食べきって満腹になった蛇がケージの中でとぐろをまいているのに出くわしていた。あまりの突然さに、大げさではなく腰がぬけるくらいビックリする。この6月、それに匹敵するような経験をした。
庭の小さな池にメダカを飼っている。といっても、直径が1メートル弱という深めの水たまり程度のものだ。ビオトープにしようと思って掘ったのだが、どうにもそうはならず、夏になると水が腐ってくる。なので、定期的に水を半分ほど入れ替える。
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