日本でのHCV感染は1860年代から広がった。2005年での患者のピーク年齢は70歳代であり,その後は減り続けている。米国では患者のピークが40歳代と若く,今後,日本と同様に肝癌が多発する可能性がある
HCVの治療は,インターフェロン(IFN)投与から始まり,その後,IFNの改良やリバビリンの併用によって治療成績が向上した
続いて直接作動型抗ウイルス薬(DAAs)が登場し,IFNやリバビリンと併用する3剤併用療法が開発された
現在ではIFNやリバビリンの副作用を避けるIFNフリーでのDAAs治療が開発され,飛躍的な治療成績の向上が認められている
ウイルス性肝炎の原因となるウイルスの主だったものとして,A型からE型までが知られている。日本国内では,そのウイルス性肝炎の大半がB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)とC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)由来である。国内の肝癌死亡者の約70%はC型肝炎由来であり,B型肝炎由来とされる肝癌の約3倍と多数を占めている。世界の患者と比較すると,日本のC型肝炎キャリアは,高齢であるという点にその特徴がある。原因として,世界的に早い時期からHCVが国内で感染拡大したことが挙げられる。その後,医療技術や検査体制の整備により,薬物乱用者らなどの特殊な例を除いて新規感染はほぼ発生していない。そのため,幸いなことに,患者数は治療の発展とともに減少の途をたどっている。
インターフェロン(interferon:IFN)による治療法は,1990年代から本格的に開始された。その治療法の変化はめまぐるしく,現在では直接作動型抗ウイルス薬(direct acting antiviral agents:DAAs)と呼ばれるHCVに特異的な阻害効果を持つ薬剤が誕生している。そのおかげで,ウイルス排除が困難とされたHCVは,排除可能な疾患となりつつある。
本稿では,HCVの感染拡大の経緯を述べつつ,抗HCV治療の変遷についても概説することとする。
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