フランスのランダム化比較試験であるTANIA試験では,一次化学療法としてベバシズマブ(アバスチンⓇ)と化学療法を併用した494例の患者について,アバスチンⓇ+ほかの化学療法群(32.1カ月)と化学療法単独群(30.9カ月)で無増悪生存期間(PFS)を比較した。PFSは併用群で有意に改善したが,QOLの改善はなかった1)。
筆者らの教室では術前にベバシズマブと腫瘍内酸素化の検討を行っており,アバスチンⓇのpoint of care(POC)である腫瘍血管への影響と低酸素との相関,治療効果を検討している。具体的には,術前にポジトロン断層法(PET)とダイナミック造影磁気共鳴画像法(DCE-MRI),さらに開発中であるdiffuse optical spectroscopic imaging(DOSI)を用いて腫瘍の酸素化をモニタリングした。
28例の進行乳癌にベバシズマブを単剤で投与し,その1週間後からパクリタキセルとの併用を開始した。治療前と後のPET-CTにてnon-respondersとrespondersに分類した。腫瘍のヘモグロビンの酸素化を示すFMISO-PETでは,non-respondersはrespondersに比べ,統計学的に有意に低酸素を示した。non-respondersはrespondersに比べ,ベバシズマブ投与により著明に低酸素に陥った。結論として,ベバシズマブにて低酸素となる腫瘍は,パクリタキセルの効果を減弱する可能性が示された2)。
【文献】
1) Delaloge S, et al:Ann Oncol. 2016;27(9):1725-32.
2) Ueda S, et al:Clin Cancer Res. 2017;23(19): 5769-78.
【解説】
佐伯俊昭 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター乳腺腫瘍科教授