ある人が病院で発達障害の診断を受け、「これからどうしたらいいですか」と尋ねたところ「生まれついてのものだから病院では治療できません」「頑張って生活して下さい」と言われたという。その話を聞いて「なるほどなあ、確かに生まれついてのものは病院では治療してないなあ」と感心した覚えがある。では、発達障害専門クリニックで私は毎日何をしていることになるのだろう?
日本語の「障害」に当たる言葉は英語ではimpairment、disability、disorderなどいくつもあるのをご存じだろうか。確かに、発達障害はある一定の脳の発達特性や欠損を指す。ただし、それはあくまで多数派と異なる特徴であり、そもそもそれだけでは「障害」とは言えない。特性=発達障害ではなく、特性がうまく使いこなせなかったり、環境との折り合いが悪く、十分対処できない場合に初めて「発達特性による生活障害」(いわゆる不適応)がおこり、さらにそれが介入を必要とするレベルだと「発達障害」と言うのである。
発達障害の脳の特性そのものは、多数派と異なる特徴(impairment)である。その特徴と環境の折り合いの悪さから「生活障害」(disability)がおこり、それが社会の許容範囲のうちは「不得意・苦手」と呼ぶ。さらに「生活障害」が自分で管理できず周囲の介入が必要となるような不適応の状態を我々は「発達障害」(Developmental Disorder)と呼ぶのだ。
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