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小児科診察室の窓から見える社会[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.86

小保内俊雅 (東京都保健医療公社多摩北部医療センター小児科部長)

登録日: 2018-01-06

最終更新日: 2017-12-20

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最近、頭痛を訴えて外来を訪れる子どもが増えている。子どもたちの体を触ると、項部から肩、そして背筋が鋼のように凝り固まっている。筋緊張型頭痛である。登校途上に来院した子どものリュックサックの目方は、優に25kgを超えている。さらに、図画工作の道具や体操着などが両手を塞ぐ。未だ虚弱な小学生には過酷であろう。また、伸び盛りの中学生の骨格に及ぼす影響を考えると、心穏やかではいられない。

ゆとり教育の反動から副教材が付加され、配布資料の量も増えているためらしい。ゆとり教育が始まり、円周率を3に変更することの意義が議論に上ったのはほんの先頃で、既に方針は180度転換され、子ども達の双肩に重荷を負わせている。

シュレーダー政権時のブルマーン教育相は、初等・中等教育はいつの時代においても不変で、基礎となる必須知識と技術を、正確にかつ適切に習得させることが目標である。最先端の技術革新に翻弄されこれらが蔑ろにされると、科学の不適切な利用や発展をもたらす危険がある、として、急進的な教育改革派の手綱を引いた。これは今も広くドイツ国民に支持されている。

子どもを市場とみなしたビジネスも拡大している。スマートフォン代金の学生割引が無節操な使用を促す。スマホゲームはアクセスごとにポイントを加算するなど射幸心を刺激して、中毒化を煽っている。これらが子どもたちの大事な睡眠を蝕んでいる。

ここ数年、日本全体の自殺発生率は低下しているが、10代に限ってみると年々増加している。いじめがクローズアップされているが、むしろ、蝕まれた眠りで脳が攪乱され、精神の平衡を失った影響ではないか、と考えるのは短兵急であろうか。

いつの時代においても斬新なことを持て囃す日本の風土においては、修辞術が必須である。「日本死ね」の一言が待機児問題を拡散し、安全を顧みずに保育サービス拡大が断行される日本である。1億総活躍社会を染め抜いたマントの裾をめくってその社会構造をみたら、子どもたちが踏み台にされていた。

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