少子化が止まらない。日本は過去20年間にエンゼルプラン、新エンゼルプラン、そして子ども・子育てビジョンを発表し実施してきたが、ほとんど効果を上げていない。日本の子どもが減るということは、将来の生産者人口が減少し国の収入が減るということで、それは結局年金などの高齢者の福祉にも影響する。つまり、子どもが減るということは国が衰退するということに他ならない。
もう30年以上前になるが、松下電器を創業した松下幸之助氏がその著書の中で述べた言葉が忘れられない。「子育てにはお金がかかる。そのため国が子ども1人当たり月10万円支給する。すると年120万円、20歳まで払って計2400万円になる。子ども1人の国家資産は2億円だから、その10%に過ぎない。この子どもへの支給は国債でまかなったらいい。とにかく子どもにかけるお金を惜しんでは国が滅びる」。
30年前の言葉ではあるが、卓見である。もちろんお金だけで子どもが増えるとは言えないが、おむつやミルクから塾の費用など、若い親にとって出費は膨大である。そうなると、若者が結婚自体を躊躇する。
現在、男性の未婚率は4人に1人、女性の未婚率は8人に1人、まさに少子化の負の連鎖ではないだろうか。さらに問題なのは、国の子どもへの助成の少なさである。国立成育医療研究センター理事長である五十嵐 隆先生の講演によると、国が子どもと高齢者に使うお金の比率は1:18だという。人口比率からしても、この数字は子どもに対してあまりに手薄すぎであろう。
このように考えると、松下幸之助氏の案はかなり現実味のある解決策である。現金で払えば、親が遊興費などに使うので意味がないというなら、たとえば「子ども商品券」をつくって配り、使途は子ども用に限定する、という方法もある。現在議論されている学校授業料もこの費用でまかなってもらう(松下幸之助氏の試算を現在の貨幣価値に換算すると約2倍なので年240万円になり、十分まかなえる)。たとえ国債を使っても、子どもが増えれば将来は十分還元できるはずである。
少子化対策こそ国家百年の計である。石井版「新・新エンゼルプラン」は個人的な意見ではあるが、改革に遅すぎることはなく、国の大胆な対応を望みたい。