現在外科医志望者は減少しており、1990年代と比べ約50%しか誕生していないことから、日本外科学会は2009年11月に外科医志望者減少問題に関する要望書を厚生労働大臣に提出しています。対策として、①医師数増員、②コメディカルスタッフの充実、③医療事故の原因究明、医療安全推進のため第三者委員会設置、④無過失損害補償制度確立、⑤手術に対する診療報酬費の大幅アップ、⑥外科専門医制度確立とドクターズフィー制度設立、を提言しています。この活動で少しずつ改革は行われてきましたが、いまだ実現していないことが多いのが現状です。
2015年10月に施行された「特定行為に係る看護師の研修制度」は、医師または歯科医師の判断を待たずに、手順書により一定の診療の補助を行う看護師を計画的に養成していく制度です。この制度は医師と看護師の中間レベルの非医師高度診療師であるnurse practitioner(NP)およびphysical assistant(PA)制度への一歩として評価していますが、個人・病院にとってのメリットが保証されておらず、必ずしも普及はしていません。
また、2010、2012年度の診療報酬の改定で手術手技料の増額を得ましたが、大規模病院を中心に外科系診療科の大幅な増収を得たものの、外科に特化した待遇改善策を執ったと答えた病院は10%程度に留まっています。この結果、相変わらず労働時間は異常に長く、責務は重く、外科医は必死で高いレベルの外科医療を支えています。平成24年度で1週間あたり平均労働時間は78.5時間で、法律上の限界40時間のほぼ倍となります。
このように日本外科学会では、労働環境改善を通して、外科医志望者の増加をめざし、より安全で質の高い医療をめざしていますが、未だ道半ばであり、海外と同様に女性医師の急激な増加などから、より労働環境へのアプローチが重要となっています。
外科医は魅力ある仕事です。絶滅危惧種とならないよう努力していく必要があると考えています。