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医学教育[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.56

河野嘉文 (鹿児島大学医学部長)

登録日: 2018-01-04

最終更新日: 2017-12-21

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医学教育制度の改編が急速に進んでいる。いわゆる2023年問題が「黒船」として改革を迫ってきたための現象という印象が強いが、それ以前からも徐々に工夫と改善が続けられてきた。しかし、現場の教員は、自分が受けた時代の医学教育を基盤として教えるため、少なくとも私の周囲では教育学に裏打ちされた医学教育に馴染めない、という現実があった。

現在の医学教育に携わる教員の大多数は、教育学を習得しているわけではない。人を対象とする医療の職人として、徒弟制度の中で鍛え上げてきた知識・技量を用い、たまたま学生の教育に従事している。知識・技量だけの伝授であれば、いわゆる専門学校であり、学問を究める最高学府とは異なるように思うが、医学の世界では学問は大学院で実践する、ということであろう。厳しい受験競争で選択されてきても、医学生のレベルは多様である。入試の成績と在学中の成績、そして医師としてのレベルが相関しないことは、誰もが知っている事実である。学生の成績は試験での評価が主であり、医師としての評価は日々の活動の結果であるため、一致しなくても不思議ではない。最終的に、臨床医としての能力評価は患者さんがしている。

医学部あるいは医科大学の教育評価は、国家試験合格率で社会的に評価される傾向にある。「何人合格したか」よりも「何パーセント合格したか」が高い評価を受け、大学からも社会からもその向上を求められる。いい医師を輩出すること、優れた研究者の卵を育成したことは評価対象になりにくい。結果として、医学部教育の重点は、成績の悪い学生を国家試験合格レベルにすることに置かれ、必然的に、そのためのカリキュラムになる。もともと優秀で成績良好な学生にとっては迷惑な話である。国家試験準備にあてられる6年生後半、彼らは臨床能力を磨く機会を奪われているのではないか。学士編入学する学生は4~5年間で卒業している。一般入学の中でも一部の優秀な学生は、定められたアウトカムに到達するのに6年を要しない。評価は難しいが、「飛び級」があってもよいと思う。

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