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(2)変形性股関節症の治療 骨切り術と人工股関節全置換術を中心に [特集:変形性股関節症治療の実際]

No.4794 (2016年03月12日発行) P.24

菅野伸彦 (大阪大学大学院医学系研究科運動器医工学治療学寄附講座教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 変形性股関節症は,股関節に対する力学的過剰負荷による関節軟骨の変性や損傷から軟骨の摩耗,軟骨下骨の侵食や嚢腫形成へと股関節の変形が徐々に進行し,疼痛や可動域制限,歩行能力低下などを生じる

    日本人の変形性股関節症は,発育性股関節形成不全〔先天性股関節脱臼(DDH)〕による二次性股関節症が大半を占めており,発症年齢が欧米よりも低い

    X線学的に変形性股関節症は前期,初期,進行期,末期に分類されるが,40~50歳までの初期までなら,寛骨臼回転骨切り術(寛骨臼移動術)やキアリ骨盤骨切り術による関節温存手術で長期にわたる症状の改善と関節症進行の抑制が可能である

    進行期や末期股関節症には,患者の年齢や要望を考慮して大腿骨外反骨切り術とキアリ骨盤骨切り術の併用が適応となることがある

    人工股関節の進歩は著しく,機能回復や長期耐用性の向上により,進行期や末期股関節症患者の疼痛,可動域,脚長差,歩行能力を比較的短期に回復させ,QOLを改善する優れた治療法である

    1. 日本人における変形性股関節症の特徴と治療方針決定の参考となる病期分類

    変形性股関節症は,股関節に対する力学的過剰負荷による関節軟骨の変性や損傷から軟骨の摩耗,軟骨下骨の侵食や嚢腫形成へと股関節の変形が徐々に進行し,症状として疼痛や可動域制限,歩行能力低下などを生じる。原因不明な一次性股関節症と原因の明らかな二次性股関節症に大別され,日本では,発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼,developmental dysplasia of the hip:DDH)による二次性股関節症が大半を占めている1)。症状や年齢と股関節症の進行度(病期)が治療法の選択に重要である。日本整形外科学会の股関節症病期分類はX線像評価に基づき,前期,初期,進行期,末期に分類している。前期は,DDHや大腿骨頭変形などの先天的・後天的変形を有するが,関節裂隙は正常である。初期は関節裂隙のわずかな狭小化,関節面の不適合,荷重部の骨硬化像など,進行期は関節裂隙の明らかな狭小化,関節面の不適合,大腿骨頭・寛骨臼辺縁部の骨棘形成,大腿骨頭の骨硬化像,嚢胞形成,末期は関節裂隙の広範な消失,広範な骨硬化,骨嚢胞,著明な骨棘形成,寛骨臼底部の二重像などがみられる。

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