超高齢社会となった日本では特別養護老人福祉施設(特養)に入所している人も多くなり、その人達が歩けず自分で食事が摂れなくなったときにどうするかが問題となる。介助による経口摂取を行い、食材にも工夫し、栄養食なども加えて十分なカロリーを摂れるようにするが、それでも体重減少は進行する。
病院に入院した高齢患者の急性期に、自分で食事ができない間は経管栄養(経鼻経管チューブや胃瘻、中心静脈)が行われ、認知症の患者ではチューブを自己抜去しないように身体拘束が必要となる。治療を終えて施設に戻ってきた患者への経管栄養の注入は医療行為であり、介護士はできないので、看護師が勤務している時間内に終えなければならない。
Palecekらは、2010年に認知症末期になったときの介助による経口摂取について栄養補給ではなく、食べる楽しみを目的とするcomfort feeding only(CFO)を提案し、認知症末期に自力で経口摂取ができなくなったときに、家族や介護者が経管栄養をするか否かの決断をするときの選択肢としている。
高齢で認知症の末期になり、自分で経口摂取ができなくなるのは自然の経過であり、如何に栄養補給をしても体重減少は防止できないと考えられ、食事の目的を楽しみとすれば、介護者も本人の食べ具合に合わせて量を加減でき、注意深いケアとなる。家族にとっても寝たきりになった高齢者に何もしないのではなく、食事の席に着かせ、介助により本人が受け入れるだけを経口摂取で摂る手厚いケアを受けることになり、味も匂いも感じることのない経管栄養をしなくても納得できるのではないだろうか。