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移民医師の必要性について[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.96

平田幸一 (獨協医科大学病院病院長)

登録日: 2018-01-06

最終更新日: 2017-12-22

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私は1年ほど前、ドイツ・ヴュルツブルク大学神経内科の教授と食事をしている際に驚くべき事実を教えて頂きました。それは、そこにいる医師はレジデントを含め、その30%が移民出身であるということでした。とても優秀なのですが、移民でないいわゆる生粋のドイツ人医師は、いかに効率よく働き、休みを取り、バカンスに行くか、ということが信条であるということでした。その穴埋めはすべて移民出身者がやっており、文化の異なりや言葉の問題から、患者─医師関係の問題は常にあるものの、彼らがいなければ診療は成り立たないということでした。同様のお話は数年前にパリの大学病院に当科の医師を留学させたときにも聞いておりました。

さて、翻って日本の場合どうなのでしょうか? わが国でも今、医師の労働時間制限が非常に大きな問題としてクローズアップされています。いわゆる働き方改革です。この問題を解決するにはどうしたらよいのでしょうか。医師の数を増やす政策を今行っているところですが、今の超高齢化に追いつくような一人前の医師が多く出てくるのには、どのくらい時間がかかるのでしょうか。先ほどのドイツの場合、移民と言ってもその多くは移民2世です。その2世の人たちがしっかり働くようになるのには、生まれてから医師として働けるまで30~40年かかっています。

また、前述したようにその移民たちからなる医師の背景となる文化的なカルチャーの違い、これも大きな問題があります。実は今までも日本には、朝鮮半島、中国からの移民2世が、ある程度の役割を果たしてきてくれた事実はあります。しかし、彼らは日本の文化に溶け込むよう弛まない努力をしてきた方たちです。

これからの時代、まさに多民族による移民に医療人として日本の医療を守ってもらうことは絶対に必要であると私は思います。背景にある文化がどのような違いを持っていて、どのように働き方を工夫しなくてはいけないのかを考えていく必要があります。この超少子高齢化時代を迎えて、ここで確実な方向性を見つけないと臨床でのサービスの低下も起きるし、医療分野の研究、論文数もどんどん減っていくという、まさに危機的な問題に直面していると思われます。

着実ながらもスピード感のある、他国の医療資源の導入、そしてAI(人工知能)の活用を皆が考える時と思っております。

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