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人間ドック再考[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.18

大西 真 (国立国際医療研究センター病院病院長)

登録日: 2018-01-01

最終更新日: 2017-12-26

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人間ドックは、日本では昭和29年に当院が始めた「短期入院総合精密身体検査」が発祥となっているが、世界的には20世紀の初頭、米国の保険会社で行ったとされている。人間ドックの「ドック」は船の修理や建造用の施設「dock(ドック)」のことで、点検や修理をするために入る場所であることから名づけられた。新聞で報道されたこの名称が定着し、論文にも使用されるようになり、検査や医療技術の進歩とともに発展してきている。

当院は最近、人間ドックセンターを全面的にリニューアルし、ナショナルセンター唯一の総合病院としての利点を生かして、人間ドックで認められた所見については専門診療科が精査や治療にあたっている。多彩なオプション検査を用意し、多方面からの評価を可能としており、認知機能評価を加えた脳ドック、膵臓癌早期発見を目的とした膵臓ドック、大腸内視鏡検査と大腸CT検査が選択できる大腸ドックの他、甲状腺、糖代謝、肝臓ドック等、自在な選択が可能となっている。また、特徴的なことは外国人患者の受診が多いことである。中国人を中心に受診者の1/3を外国人が占めるため、医療通訳を人間ドックセンター内に配置して、安心して受診できるような配慮をしている。

健康診断を受けてはいけない、といった類の本がベストセラーとなっているが、症状が出てからでは多くのがんは手遅れであり、国民病である糖尿病患者の死因の第1位はがんとなっている。日常の外来では、医師は自分の専門分野を中心に診療にあたるので、人間ドックを受診することにより、他の重要な疾患の早期発見につながることも少なくない。また、人間ドックで、時間を十分にとって丁寧に説明することにより、患者さんの健康増進への理解がより深まるため、人間ドック受診の意義は大きい。

過剰な診断や検査とならないよう留意しながら、人間ドックを上手く活用し、患者さんをトータルで診る姿勢こそが最も重要であると考えている。

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