MDCTではthin sliceの高分解能画像,多断面での診断が可能であり,通常はダイナミックスタディを行う
MRIではMRCPのほかにもT1強調像やT2強調像,拡散強調像など様々なシーケンスを組み合わせて診断する必要がある
胆囊壁肥厚の評価には壁肥厚の性状評価に加えて形態評価も重要である
健診の腹部超音波検査で胆囊壁肥厚を指摘され,精査目的でCTやmagnetic resonance cholangiopancreatography(MRCP)を中心とするMRIを行うというパターンは日常臨床においてよく遭遇する。CTやMRIでの精査の最大の目的は,胆囊癌をはじめとする治療を必要とする疾患かどうかを診断することにある。
本稿ではCTやMRIの最近の知見も加えながら,“健診で指摘された胆囊壁肥厚”の鑑別診断,要するに無症状で発見される壁肥厚や慢性経過を示す壁肥厚の鑑別診断について述べていきたい。
multidetector-row CT(MDCT)が登場してから20年近くになるが,MDCTによるCT撮像の高速化,高分解能化は現代医療に大きな影響を及ぼした。現在でも日常臨床においては依然として従来のMDCTによる診断が主流である。通常は単純CTとダイナミックスタディによる造影パターンを確認するほか,冠状断や矢状断なども加えた多断面での診断が望ましい。一方,現在CTは320列のarea detector CTに代表されるような撮像のさらなる高速化,超高精細CTのようなさらなる高分解能化,dual-energy CTや二層検出器CTなどの物質分別化など,まさに多方向へ進化している。
MRIにおいても撮像の高速化,高分解能化が進んでおり,MRCPの3D撮像に代表されるように診断能が非常に高くなってきている。MRCPのほかにも従来のT1強調像やT2強調像の撮像時間も短縮し,画質も以前と比べると向上している。拡散強調像については従来の高b値の拡散強調像以外にもintravoxel incoherent motion(IVIM)に代表されるような従来の拡散と灌流を分別する手法など,様々な高度技術の撮像法が開発されており,依然として進化はとどまることを知らない。
推奨シーケンスは脂肪抑制T2強調像,T1強調像のin phase/out of phase,拡散強調像の一般的なシーケンスに加えて,single shotのT2系シーケンスや近年画質が特に向上した3D-MRCPやbalanced SSFP(各社によって名称が異なる。Philips社ではBalanced FFE,シーメンス社ではtrue FISP,GE社ではFIESTA,東芝社ではtrue SSFP)が重要である。MRCPにはボースデル®などのMRCP用に開発された消化管陰性造影剤の併用も有用である。balanced SSFPは胆道や膵管,血管が高信号に描出され,実質臓器も明瞭に見えるので,胆道疾患のMRIにはほぼ必須であると言っても過言ではない。造影MRIはガドリニウム製剤によるダイナミックスタディが望ましい。
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