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思い出は映画と共に[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(187)]

No.4894 (2018年02月10日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-02-07

最終更新日: 2018-02-06

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「午前十時の映画祭」では往年の名画をフルスクリーンで観ることができる。73年の映画『ペーパームーン』が上映されると聞いて、行くことに。「初恋の人と初めて2人で観に行った映画なんやけど、行く?」と奥さんを誘ったら、「ご勝手に」と言われた。ちょっと心がせまいんちゃうか。

ひょっとしたらお父さんかもしれない男といっしょに、9歳の女の子が詐欺を働きながら旅するロードムービーである。主演はライアン・オニールで、実の娘・テイタムの小生意気な演技がバツグン。最年少でアカデミー助演女優賞を獲得している。

わくわくしながら観に行った。で、感想はというと、面白かったけれども、う~ん、というところ。PG12(12歳以下は成人保護者の同伴が適当)指定になっているので、あれ、そうなんか、とは思っていたのだけれど、タバコをスパスパ吸う少女が次々と詐欺というのは、さすがにまずいわなぁ。

特に倫理観が強い方ではないが、それでも、けっこうな違和感があった。いまの時代なら、あまりうけないように思う。それ以前に、制作すら見送られるかもしれない。

もうひとつ、天才子役のご多分に漏れず、テイタムがその後あまりハッピーな人生を送らなかったことを知ってしまっているのも、もやもやした感想の原因かもしれない。

封切りの日、超満員の映画館で立ち見した『ポセイドン・アドベンチャー』。映画館を出て、同級生たちと「アチョ、アチョー」とか叫びながら歩道で暴れた『燃えよドラゴン』。誰といっしょに行ったかまで覚えている、高校生時代の懐かしい思い出だ。

『アラビアのロレンス』は、再度映画館で観てみたい映画ナンバーワンである。大学生時代に彼女(初恋の人じゃない彼女)と行った。映画館を出てからのひとことに腰が抜けた。「恋愛なんかなかったやんか」。え?と思ったが、すぐにわかった。ロマンスとちゃう、ロレンスや…。ほどなくして別れることになったのもいたしかたなし。

「思い出は映画と共に」というのは、大昔、浜村淳がやっていた深夜放送のコーナーのタイトルである。歳をとって、ほんとにそう思う。学生にいつも言うのだけれど、若い間に、できるだけたくさんのいい映画を観ておいたほうがいい。何十年かの後、ほろ苦く思い出せることもあれば、エッセイのネタになることもあるんやから。

なかののつぶやき
「関西以外の人は浜村淳の名前をご存じないかもしれない。83歳になった現在も、放送45年を迎える超長寿ラジオ番組『ありがとう浜村淳です』の現役パーソナリティーを務める関西ラジオ界の大御所だ。大昔の深夜放送『ヒットでヒット バチョンといこう!』で、映画やノンフィクションの面白さを教えてもらったので、勝手に恩人と崇めている」

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