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C型肝炎治療の現状と今後の課題[学術論文]

No.4898 (2018年03月10日発行) P.46

田中 篤 (帝京大学医学部内科学講座教授,日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会事務局)

小池和彦 (東京大学大学院医学系研究科消化器内科学教授,日本肝臓学会理事長)

登録日: 2018-03-08

最終更新日: 2018-03-06

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  • 現在,わが国におけるC型肝炎に対する治療はほぼ完成した。2~3カ月の経口薬服用により完治率は100%に近く,また副作用もほとんどない

    非代償性肝硬変と小児以外,ほとんどすべてのC型肝炎患者が治療対象となるが,ウイルス排除後も肝発癌リスクは残るため,治療後のフォローアップは欠かせない

    わが国からC型肝炎を廃絶するために,治療に結び付いていないC型肝炎患者の掘り起こしが最大の課題である

    1. C型肝炎治療を取り巻く現況

    C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)に対する治療薬の進歩は目覚ましく,ほぼ完成されたと言ってよい。現在ではほぼすべてのHCV感染症例が治療対象となり,完治率は100%に近く,副作用もない。しかし,治療薬の進歩はきわめて目まぐるしく,適切な患者を,適切な薬剤により,適切な時期に治療することに,肝臓専門医でさえ困難を覚える場合が少なくない。

    このような状況をふまえ,日本肝臓学会では2011年に肝炎診療ガイドライン作成委員会を立ち上げ,2012年に「C型肝炎治療ガイドライン」を作成し,その後も新規薬剤の承認・発売,あるいは既存薬剤の適応拡大が行われるたびに改訂している1)。毎年2~3回という頻繁な改訂が求められるため,通常の診療ガイドライン作成手順に則ってはいないものの,現在のC型肝炎治療における重要な道しるべとなっている。

    本稿では,主に肝臓を専門としない実地医家の視点を意識しながら,C型肝炎治療の現状,および課題について述べたい。

    2. インターフェロン時代

    HCVが発見されたのは1989年である。1992年にはインターフェロン(interferon:IFN)がC型肝炎に対する治療薬として認可され,C型肝炎に対する治療の幕開けとなった。治癒することなどありえないと思われていた慢性肝炎という疾患が,IFNによって治癒しうるということは大きな驚きであり,喜びであった。しかし,IFNによる治療は発熱や全身倦怠感など多彩な副作用を引き起こす一方,有効性はきわめて限定的であることもすぐに明らかになった。その後,IFNとの併用により治療効果を向上させるリバビリン(ribavirin:RBV)の導入,およびIFNにポリエチレングリコールを付加し体内動態を安定させ,注射回数がそれまでの週3回から週1回に減ったペグインターフェロン(peginterferon:Peg-IFN)により,治療効果・副作用とも徐々に改善した。しかしながら,治療反応性の良いセロタイプ2型でも完治率はせいぜい70%,難治であったセロタイプ1型高ウイルス量の症例では,1年から1年半の間副作用に耐えつつPeg-IFN治療を続けても半分治るのがやっと,という状態が長く続いた。

    この「IFN治療時代」の印象はIFN治療中の患者に副作用として出現した皮疹や精神症状の診療にあたった,外来にやって来る患者から,「この間からIFN治療をしているのだけれど本当に苦しい」と言われた,といったことによって思い出される。おそらく多くの医師,ことに肝臓病を専門としない医師に強く刻まれているのではないだろうか。IFN治療によって多くのC型肝炎患者が治癒し,肝発癌を免れたことは誇るべき成果と言ってよいが,その反面,IFN治療に苦しむ患者の姿は様々な形で,今も多くの実地医家の記憶に残っているのではないか,と思う。

    残り4,306文字あります

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