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(2)熱性けいれんを起こした小児の 再発とてんかん発症 [特集:熱性けいれんの診療の現在]

No.4813 (2016年07月23日発行) P.29

浜野晋一郎 (埼玉県立小児医療センター神経科部長)

登録日: 2016-10-08

最終更新日: 2017-01-23

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  • 熱性けいれんは乳幼児期に好発する年齢依存性の良性疾患である

    30%に再発を認める。以下の因子を持たない場合の再発率は15%,いずれかの因子を持つ場合の再発率は2倍以上になる。①両親いずれかの熱性けいれん既往,②低年齢発症(12カ月未満),③短時間(おおむね1時間以内)の発熱─発作間隔,④発作時体温が39℃以下

    熱性けいれん後のてんかん発症率は2.0~7.5%で,一般と比べて2~10倍高い。しかし,熱性けいれんの結果としててんかんに至るわけではなく,熱性けいれんの再発予防によりてんかん発症を予防することはできないため,過剰な予防を増長しないように努める

    以下の因子がない場合は一般のてんかん発症率と同等である。1因子有する場合は2倍になる。①発症前の神経学的異常,②両親・同胞のてんかん既往,③複雑型熱性けいれん〔ⅰ:焦点性発作(部分発作),ⅱ:15分以上の発作,ⅲ:1発熱機会内の再発,の1つ以上〕,④短時間(おおむね1時間以内)の発熱─発作間隔

    遷延性発作の既往,または再発の可能性が高い場合には,保護者の不安と地域の特性を考慮し,再発予防を検討する

    再発予防法は,発熱時にジアゼパム坐剤(0.4~0.5mg/kg)を2回投与(8時間間隔)することである。解熱薬の再発予防効果は認められず,抗てんかん薬の継続内服は推奨されていない

    1. 熱性けいれんの有病率と予後

    熱性けいれんは乳幼児期に好発する年齢依存性の良性疾患で,20~30人に1人以上は発症するというcommon diseaseである。有病率は諸外国で2~5%1)~3),わが国では7~11%4)5)と,人種・民族差,地域差があるとされている。しかし,わが国の調査の中でも疫学的に最も信頼できる岡山県の全数調査6)では,3.4%と諸外国と同程度だった。熱性けいれんは生命予後,ならびに知能・運動機能の予後に関しても良好とされている。
    しかし,けいれんは咳嗽などの身近な症状と異なり,保護者の視点からはまったく異なった認識となる。子どもが死んでしまうのでは,脳が壊れてしまうのでは,と保護者は大きな不安にかられ,救急受診する。また,熱性けいれんからてんかんへと進展する不安も大きい。熱性けいれんの診療に関わる医師は,保護者に熱性けいれんが良性疾患であるという理解を促すことで不安の解消を図り,必要に応じた再発予防の指導をしなければならない。
    再発予防としてのジアゼパム投与の適否を説明するためには,再発とその後のてんかん発症に関する説明も不可欠である。保護者の理解に応じて,再発率・てんかん発症率とそれに関与する因子を提示し,予防方法,予防接種などに関して症例に応じた指導をしなければならない。熱性けいれん再発とその予測因子,ならびに熱性けいれん後のてんかん発症に関する知見は,熱性けいれん診療に関わる医師にとって重要である。

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