インターフェロン療法でのHBs抗原の陰性化率は,5年後6.5%,10年後15%,15年後35%である。HBs抗原陰性化に関係する因子は,年齢,男性,genotype Aである
ラミブジン治療を開始した症例の長期的なHBs抗原の陰性化率は,5年後1.8%,10年後7.3%である。HBs抗原の陰性化に寄与する因子は,開始時HBe抗原陽性例では,genotype A,治療開始後6カ月でのHBs抗原価の0.5Log IU/mL以上の低下,インターフェロン治療歴あり,治療開始後6カ月でのHBe抗原の陰性化あり,である
エンテカビル治療(naïve例)では,HBs抗原の陰性化率は5年後3.5%である。HBs抗原の陰性化に寄与する因子は,開始時HBs抗原量500IU/mL以下,HBV-DNA量2.3 Log IU/mL以下である
B型慢性肝炎の治療は,AST値,ALT値が高値の時期にインターフェロン療法を行い,その後の経過で核酸アナログ製剤を考慮することが重要である
核酸アナログ製剤を使用している症例に対しては,インターフェロンと核酸アナログ製剤の併用やsequential療法など,治療効果を上げるための投与法の検討が必要である
B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)持続感染者は,自然経過で肝炎の沈静化が得られる可能性がある。しかし,15~40%では慢性肝炎を発症し,肝硬変・肝不全に進行したり,肝細胞癌を発症したりするリスクが増大すると考えられている。このような病態の進展を防ぐために,HBVの増殖を抑制し,肝炎を鎮静化させることが必要である。
現在の治療でHBVを体内から完全に排除することは困難である。このため治療の短期目標は,ALT値の正常化,HBV-DNA量の低値(一般的には4~5Log IU/mL以下),HBe抗原の陰性化が持続的に認められることである。一方,長期的目標はHBs抗原の陰性化であり,肝炎の沈静化とともに発癌率の低下1),さらに核酸アナログ製剤使用例では治療の終了等,予後の改善がみられる。本稿では,B型慢性肝炎に対するインターフェロン療法および核酸アナログ製剤(ラミブジン,アデホビル,エンテカビル,テノホビル)治療におけるHBs抗原陰性化率と消失例の特徴を中心に述べる。