2018年度診療報酬改定では、直腸癌、胃癌など12件のロボット支援下内視鏡手術が保険収載され、腎癌と前立腺癌だけだった適応が一挙に拡大した。ただ、12件については、安全性は認められたものの既存技術と比べた優位性は認められず、保険点数は腹腔鏡手術と同じになった。直腸癌のロボット手術で約600件の実績を持つ絹笠祐介氏(東京医歯大教授)に、専門家の見地から保険収載拡大の影響を聞いた。
個人的には、もっと技術料を付けてくれてもいいのに、という気持ちもありますが、むしろ妥当だと思う気持ちのほうが強いです。
というのは、既存技術に対するロボット手術の優位性は、エビデンスとして明確には示されていません。そうした段階で高い点数を付けるのはおかしな話です。ロボットが数億円もするから高い点数を付けるのではなく、確実に有効な治療だから加点していくというのがまっとうな道筋ではないかと思います。
「ロボット手術をやれば儲かる」というモチベーションで普及してしまうと、メリットのない患者さんにまで手術が行われかねません。
まさにそこが最大のポイントでしょう。
例えば直腸癌の患者数自体は多いですが、ロボット手術が自費診療では、年間数例しかできない病院が圧倒的多数です。ロボット手術の安全性については、非劣性を示すエビデンスが世界的に報告されており、今さら先進医療の枠組みで評価する必要性はありません。先進医療では患者さんの負担もかなり重くなってしまいます。