著: | 小川 令(日本医科大学形成外科学教室 主任教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 160頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2019年03月06日 |
ISBN: | 978-4-7849-5681-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
Ⅰ 総 論
1 ケロイド・肥厚性瘢痕とは
2 ケロイド・肥厚性瘢痕のリスク因子
3 見逃してはならない別の疾患
4 診断・治療方針
Ⅱ 治療法各論
1 内服薬
2 外用薬
3 注射薬
4 安静・圧迫・固定療法
5 手術治療
6 放射線治療
7 レーザー治療
8 メイクアップ治療
Ⅲ 診療科各論
1 皮膚科─ざ瘡関連のケロイド・肥厚性瘢痕
2 小児科─BCG関連のケロイド・肥厚性瘢痕
3 消化器外科─腹部・内視鏡手術関連のケロイド・肥厚性瘢痕
4 心臓血管外科─前胸部・心臓血管外科手術関連のケロイド・肥厚性瘢痕
5 呼吸器外科─側胸部・呼吸器外科手術関連のケロイド・肥厚性瘢痕
6 産婦人科・泌尿器科─下腹部・帝王切開や内視鏡関連のケロイド・肥厚性瘢痕
7 乳腺科─乳腺外科手術関連のケロイド・肥厚性瘢痕
8 耳鼻科・頭頸部外科・甲状腺外科─耳・頸部・頭頸部がん関連のケロイド・肥厚性瘢痕
9 整形外科─関節・整形外科手術関連のケロイド・肥厚性瘢痕
10 手外科─前腕・手外科手術関連のケロイド・肥厚性瘢痕
11 形成外科・再建外科・美容外科─全身の瘢痕
『ここまでできるケロイド・肥厚性瘢痕の予防と治療』は,形成外科や皮膚科の医師だけでなく,すべての医療関係者にご一読頂きたいと思っている本です。
傷あとで悩んでいる患者さんは我々が想像する以上に多いのが現状です。外傷や熱傷はもちろん,あらゆる手術によって傷あとはできます。今までは「命が助かったのだから傷あとは我慢して下さい」とか「体質ですから仕方ありません」,また「自然に良くなりますので気にしないように」などと説明されてきました。しかし,時として傷あとは炎症を持ち続け,ケロイド・肥厚性瘢痕になり,患者さんは痛みや痒みで眠れない日々を送ることになってしまいます。
ここ10年で傷あとの研究は飛躍的に進みました。ケロイド・肥厚性瘢痕の悪化因子や原因の一部がわかってきたことにより,今まで難しかった治療ができるようになってきたのです。さらに,手術や放射線治療,副腎皮質ホルモン剤などでケロイド・肥厚性瘢痕を完治させることができるようになりました。ケロイド・肥厚性瘢痕を予防し,ひとたび発症したら,有効な治療を早く開始することで,患者さんの生活の質(Quality of Life:QOL)が改善することができます。
長い間,医療は“命を助ける”ことが目的となっていました。がん治療もそのひとつです。しかし,昨今の目覚ましい医療技術の発達のおかげで,日本では平均寿命が男女ともに80歳を超えています。このような時代にこそ重要性を増してきたのは,“いかにQOLを高められるか”という命題です。今こそ,医療従事者が傷あとに注目し,積極的に治療に取り組むべきときが来たのです。
この本をお読み頂くと,昔は難しかった傷あとの治療がここまで進んだのか,ということをご理解頂けると思います。患者さんのQOLを高めるために,読者の皆様とともに頑張っていければと願っております。最後に,本書の企画から出版までご尽力頂いた日本医事新報社の磯辺栄吉郎さんに心より御礼申し上げます。
2019年2月 著 者