小児外科領域において,胃食道逆流症(GERD)は食道閉鎖症,横隔膜ヘルニアや重症心身障害児症例などに合併して経験される,頻度の高い疾患である。従来,その診断には24時間pHモニタリングが用いられ,pH4以下時間率が診断基準として利用されていた。しかし,これは非酸性逆流や,食道内のどの高さまで逆流しているかが判定できないという欠点があった。これらが検出可能となったのが食道多チャネルインピーダンスpHモニタリング(MII/pH)である。現在,日本小児消化管機能研究会でプロトコール案を作成しており,総逆流回数と逆流時間率が診断基準として規定されている1)。
当科でMII/pHを施行し,有症状で総逆流回数においてGERDと診断された症例は9例あった。うち6例はpH4以下逆流率に異常は認めなかった。6例中3例が重症心身障害児であり,2例には噴門形成を施行し,1例は全身状態不良のため胃瘻造設のみとした。3例の神経学的健常児はPPI内服で良好な経過を得ている。
MII/pHでは,従来のpHモニタリングでは検出できなかったGERD症例を発見でき,手術適応の決定や内科的治療の早期開始にも有用であった。しかし,この検査結果のみで治療方針を決定するのではなく,臨床症状と併せて総合的に判断することが重要である。
【文献】
1) 日本小児消化管機能研究会 日本小児食道インピーダンスpHモニタリングワーキンググループ:日小外会誌. 2017;53(6):1215-9.
【解説】
坂井宏平*1,田尻達郎*2 *1京都府立医科大学小児外科 *2同教授