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局所進行膵癌に適した化学療法やcon-version surgeryの適応【conversion surgeryは予後が期待される症例に行うべき】

No.4906 (2018年05月05日発行) P.54

肱岡 範 (国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科医長)

中井陽介 (東京大学医学部消化器内科特任講師)

登録日: 2018-05-08

最終更新日: 2018-04-26

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  • 化学療法の進歩により,当初切除不能であっても,切除可能となる局所進行膵癌の症例が増えてきました。局所進行膵癌に適した化学療法やconversion surgeryの適応について,今後の展望を東京大学・中井陽介先生にお願いします。

    【質問者】

    肱岡 範 国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科医長



    【回答】

    膵臓癌は診断時70~80%が切除不能であり,依然として予後不良がんの代表です。切除不能膵癌は,遠隔転移例と,転移はないものの周囲大血管浸潤を伴う局所進行例に分類されます。近年,遠隔転移例に対する強力な化学療法としてFOLFIRINOX療法1)やgemcitabine+nab-paclitaxel療法2)の予後延長効果が証明されています。局所進行例におけるエビデンスは少ないですが,同様の強力な化学療法が積極的に行われるようになり,高い腫瘍縮小効果から血管浸潤の所見が改善し,切除可能となるconversion surgery症例の報告が増えています。一方ですべての局所進行膵癌が切除可能となるわけではなく,conversion surgery率は30~40%程度です3)

    局所進行例に対する化学療法の治療成績は,現在では生存期間2年前後まで改善しており,切除適応の決定には十分な留意が必要です。また,強力な化学療法は抗腫瘍効果が高い一方,骨髄抑制だけでなく末梢神経障害などの有害事象も強く,長期投与によりQOL低下をきたす症例も経験します。これらの強力な化学療法開発前にわが国で検討されたgemcitabine+S-1併用療法の統合解析4)では,局所進行例においてgemcitabineより有意に生存を延長したことが報告されています。遠隔転移例と同様に治療強度を高めることがそのまま生存期間の延長,QOLの向上につながるかどうかは今後さらに検討が必要です。

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