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ホルモン陽性HER2陰性の進行再発乳癌への新たな治療選択肢【CDK4/6を選択的に阻害する治療薬を承認】

No.4906 (2018年05月05日発行) P.52

荒木和浩 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科准教授)

三好康雄 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科教授)

登録日: 2018-05-05

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乳癌の発生にはエストロゲンと,それが作用するエストロゲン受容体(ER)が肝である。乳癌の約80%はERを有し,ホルモン依存性と呼ばれる。ホルモン依存性(陽性)乳癌に対する治療法には,エストロゲンとERを阻害する薬が使われ,これらをホルモン療法と呼ぶ。乳癌に特徴的で,術後補助療法,進行再発乳癌に適応される。この治療は元から効果のない場合もあるほか,長期に及ぶと効果を認めても耐性となり,再発・再燃することもある。

乳癌細胞のすべてのホルモン耐性機序は解明されてはいないが,様々な治療法が検討されている。パルボシクリブはそのひとつでCDK4/6を阻害する。CDKは細胞周期に関与する蛋白キナーゼで,サイクリンと結合し細胞が増殖する。本薬剤はCDK4と6を選択的に阻害し,細胞周期を抑制してがんの増殖を阻害する。国際共同第3相試験(PALOMA-2と3)で,パルボシクリブはホルモン陽性HER2陰性進行乳癌に対して内分泌療法との併用で臨床的有効性を示した1)2)

前者では初回内分泌療法としてレトロゾール(アロマターゼ阻害薬)と併用,後者は内分泌既治療にフルベストラントと併用して,それぞれハザード比を0.58(95%CI;0.46~0.72,P<0.001),0.46(95%CI;0.36~0.59,P<0.0001)に改善した1)2)。高額で,かつ長期間投与となるため,症例を適切に選択する手法の確立が必要であろう。

【文献】

1) Cristofanilli M, et al:Lancet Oncol. 2016;17(4): 425-39.

2) Finn RS, et al:N Engl J Med. 2016;375(20):1925-36.

【解説】

荒木和浩*1,三好康雄*2  *1兵庫医科大学乳腺・内分泌外科准教授 *2同教授

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