1993年の製作当時、世界中で問題となっていたエイズを取り上げた、マシュー・モディーン主演のテレビ映画。パイオニアLDCから販売されていたVHSは廃盤
1981年に、米国CDCのMMWRにて5人の若い男性のカリニ肺炎が報告された。後にAIDSと呼ばれる症状であり、HIVが原因であった。この映画は、HIVの感染ルートの特定、HIVの発見、そして社会とHIVの関わりについて当時の様子をハイライトしている。
私が1994年に医学部を1年間休学し、アフリカを旅した際、ある国では成人の2割以上がHIVに感染しているという報告もあった。薬のない時代は、HIVに感染することが死を意味していた。HIVは、アフリカ社会に大きな影となっていた。
この映画は、大学に復学した際に、母校の医動物学の教授が貸してくださった。
現場に何度も足を運び、患者さんから丁寧に聞き取りを進め、病気のリスクを特定する疫学という学問があることを知り、そして感染者に対する社会からの偏見などへの対応を行う社会医学の分野を今後の専門としたいと思うようになったきっかけと、今振り返る。
医師となり、公衆衛生を学び、ミャンマーでのHIV対策や感染者の差別偏見の研究を行ったのはここにルーツがある。
この映画は少し古いため、見ようと思うと、VHSの中古をネットで購入するか、ネットでの配信を有料で見ることとなる。
病気の症状が報告され、原因であるウイルスが特定され、薬が開発され、予防が徹底され、感染者が減少するに至った30年間に人類は多くを学んだ。今やHIVも「慢性疾患」と位置づけられる時代となった。
HIVが発見された当時のことを知らない若い医師にはぜひ見ていただきたい。
また、映画と合わせて、書籍「エイズの起源」(ジャック・ペパン著、山本太郎訳、みすず書房、2013)も紐解き、HIVと人類の深い関わりの歴史にも触れたい。