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温故知新─乳がんに対するエストロゲン療法[プラタナス]

No.4909 (2018年05月26日発行) P.3

岩瀬弘敬 (熊本大学大学院生命科学研究部乳腺・内分泌外科分野教授)

登録日: 2018-05-25

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  • 1970年前後、エストロゲン大量投与法は乳がんに対するホルモン療法のひとつとして用いられていた。しかし、1980年に抗エストロゲン薬であるタモキシフェンが登場し、その副作用の少なさから、エストロゲン療法はほとんど用いられなくなった。一方、2000年前後には閉経後患者に対してアロマターゼ阻害薬が使用されるようになったが、この薬剤はエストロゲン産生にかかわるアロマターゼを選択的に阻害して乳腺組織内のエストロゲンを低下させることで効果を示す。

    2008年、アロマターゼ阻害薬に獲得耐性となった転移・再発症例にエストラジオールを投与すると、腫瘍の増殖をある程度抑制できることが米国のEllisらから報告された。

    我々も化学療法や内分泌療法で治療されてきた多発肝転移を伴う56歳の再発乳がん女性に対して、エチニルエストラジオール(プロセキソール®)を3mg/日、経口投与した。この薬剤は終末期乳がんに対して適応のある薬剤で、エストラジオールより強いエストロゲン作用がある。その結果、4カ月後には60%を超える肝転移巣の縮小があり、その奏効は16カ月続いた。さらにこのエストロゲン治療が無効となった後に、引き続いてアロマターゼ阻害薬によるエストロゲン除去療法を行うことで再び効果が得られた。

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