心電図は,臨床医にとって,いろは順の“い”に相当する検査であり,医師なら誰もが読むことができて当たり前と思われています。しかし,この心電図を十分に判読できる医師は意外と少ないのが実情です。循環器医は別として,ほとんどの医師が口をそろえて,「心電図は難しい」「心電図は何度聞いても判らない」と言います。なぜ,このような状況になったかを鑑みると,心電図に関する書籍の多くが稀な現象や所見にこだわりすぎて,どれが不整脈や疾患に特徴的な所見かがわからなくなってしまったことが原因ではないかと感じています。心電図にはバリエーションがたくさんあります。その中で,最も特徴的で知っておかなければならない所見を,確実におさえることが重要です。それが心電図を克服する道だと思っています。
本電子書籍は,単なる心電図の参考書ではなく,心電図をたくさん見て体験的に判読の仕方を会得する解説書をめざしました。項目立ては,心電図を所見・不整脈・心疾患をもとにカテゴリー別に分類し,それをもとに解説しました。1項目(心電図)につき原則1頁完結をめざし,よく遭遇するカテゴリーの心電図においては,一人の解説者だけでなく,複数の解説者でその心電図の読み方を記載して頂くことで,偏りをなくし,考え方にもバリエーションを持たせました。
心電図には,12誘導心電図,ホルター心電図,モニター心電図などがありますが,定型の執筆フォーマットに従って記載して頂くことで,ビュジュアル的な面でも工夫を凝らしました。執筆者は日々の臨床で多くの心電図を実際に見ている医師に担当して頂きました。
本電子書籍が心電図の読みを苦手としている医師またはメディカルプロフェッショナルの方に受け入れて頂き,心電図のバイブルになって頂ければ,企画した者として本望です。