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第8回(完):今後,総合診療クリニックが求められていく〜地域に求められるクリニックをめざして

登録日:
2024-11-26
最終更新日:
2024-11-26

執筆:菊池大和(きくち総合診療クリニック院長)

あと数年すると,国民の1/3が65歳以上になります。2040年には100歳以上の方が,今の9万人から30万人になります。また,2022年時点の要支援・要介護者は690万人で,1年で8万人増えています。2040年には,要介護者が1000万人に近づく予想です。そして現在85歳以上の方が600万人ですが,2040年には1000万人を超えます。日本国内は,高齢者の割合が急速に上昇しています。介護が必要な方が急速に増えています。

このままでは守れない地域医療

今まではなんとか地域医療が保てていましたが,それが崩れ,とても危険で不安定な時代になります。都会は専門クリニックであふれ,地方はクリニックが減ってなくなります。このままの開業医の在り方では,地域医療は守れないのは目に見えています。

体の悪い高齢者が,いくつものクリニックに薬をもらいに行く,いざというときにどこへ行けばいいかわからない,老老介護で足もない,認知症が進み病気の発見が遅れる……。そうならないように,日本全国に総合診療かかりつけ医が必要です。

「いつでも,何でも,誰でもまず診る」マインド

自分の健康はそこに行けば,なんとかしてくれる。そんな総合診療クリニックが必要不可欠です。総合診療かかりつけ医は,内科も外科も診てくれます。検査もでき,土日もやっています。ちょっとした悩みも聞いてくれます。1人の患者さんのかかりつけ医は,1人の責任ある医師です。患者さんがこのようなかかりつけ医を探しているのは,私が開業して実感しています。

しかし現在,専門分野に力を入れてきた医師教育の影響で,総合診療かかりつけ医はほとんど日本にいないのです。「いつでも,何でも,誰でもまず診る」といった,総合診療かかりつけ医には当たり前のマインドをもつ医師がいないのです。それには地域医療を守るという強い自覚と責任が必要です。

そして,本当のかかりつけ医へ

若い先生方には,地域医療を守る本当のかかりつけ医になって頂きたいです。これから開業する先生方は,ぜひ間口の広い総合診療クリニックを開業して下さい。国には開業サポートをお願いしたいです。大学などの教育機関には,ぜひ開業ありきのプログラムをつくり,開業後も連携を取って頂きたいです。自治体には,開業にかかるお金をサポートし,総合診療クリニックを誘致して頂きたいです。そうすれば,国民の方は,安心して慣れ親しんだ地元で暮らすことができます。

「どこに行けばいいかわからない」「クリニックで断られた」などという高齢者の声が将来増えないようにしないといけません。私が思うかかりつけ医とは,人の命を尊重し,責任もって診る開業医のことを指します

菊池 大和/きくち やまと (きくち総合診療クリニック院長)
2004年福島県立医科大学卒業。09年湘南東部総合病院外科科長/救急センター長,16年座間総合病院総合診療科,17年開業。

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