日本医師会は9月17日に定例会見を開き、会員向けに実施した診療所の緊急経営調査結果を公表した。調査では、医療法人立の診療所における2024年度の医業利益は45.2%、経常利益は39.2%が赤字、近いうちに廃業を考えている診療所も13.8%に上るという厳しい経営環境が浮き彫りになった。
調査は、2023年度と24年度の2年分の診療所の経営実態を早急に把握し、今後の議論に備えるため、日医会員の診療所管理者(院長)7万1986人を対象にWeb調査と郵送調査を併用する形で実施。調査期間は6月2日から7月14日で、有効回答数は1万1103人(医療法人立:6761、個人立:4180)だった。
会見で調査結果を説明した日医の松本吉郎会長は、「物価高騰、人件費上昇の中で病院や診療所を取り巻く経営環境は極めて厳しい状況にある」と危機感を強調。「このままでは、診療所が事業を断念し、地域の患者さんへの医療提供を継続できなくなる」と懸念を示した上で、「次期診療報酬改定の大幅アップ、補助金または期中改定による緊急措置が必要であることを国に強く求めていく」と述べた。
2024年度の経営状況が前年に比べ大幅に悪化していることが明らかとなった医療法人立の診療所は、医業利益率が6.7%から3.2%、経常利益率は8.2%から4.2%に半減した。中央値は医業利益率が4.8%から1.1%、経常利益率が6.2%から2.1%となり、利益率の中央値が平均値に比べ約2ポイント低いことから、実態は平均値より厳しいことが示唆された。
個人立診療所の利益率も悪化した。医業利益は30.8%から26.4%、経常利益率は31.1%から26.0%に減少した。個人立では利益が出ているように見えるが、この点について城守国斗常任理事は「個人立は医療法人と収支構造が異なり、事業者所得(開設者の報酬)が損益計算書の費用に含まれず利益に含まれるため、医療法人に比べて利益率は高くなる傾向にある」と説明、正確な理解を促した。
利益率が悪化した主な要因は、新型コロナに関する補助金や診療報酬上の特例措置の廃止による医業収益の減少と物価高騰や人件費上昇に伴う医業費用の増加。約7割の施設で医業収益は悪化した。医業費用の項目では、給与費、医薬品費・材料費が医療法人立、個人立ともに対前年で増加していた。