□気道・呼吸の異常があれば,補助換気,必要に応じ気管挿管をする。痙攣重積が疑われるときは,並行して痙攣の治療を行う。
□不穏があり,静止できないときには鎮静も考慮する必要があるが,その際は神経所見を診察することが重要である。
□痛みが強いために問診・診察が滞るときは,鎮痛薬の内服や点滴,静脈注射などを考慮する。
□頭部CTは,その感度および普及率の高さから最優先すべき検査であり,脳出血・SAH,頭蓋内圧亢進を起こす頭蓋内病変の精査のため行う。
□脳動脈瘤の既往やSAH,脳動脈解離を疑う病歴がある場合には,さらに頭部MRIを追加する。
□CTで認めにくいSAHには,MRIのFLAIR画像が有効で,脳動脈瘤・脳動脈解離を診断する目的ならMRA,BPAS(basi-parallel anatomical scanning)といった特殊な撮影画像,静脈洞血栓症を診断する場合はMRV(magnetic resonance venography),脳膿瘍の診断にはdiffusion画像が有効である。
□脳炎を疑う場合は,卵巣腫瘍との関連が指摘されており,腹部CTが必要になる。
□髄膜炎や副鼻腔炎,側頭動脈炎を疑う場合,血液検査に赤沈,血液培養などを追加する。集団で頭痛患者がいる場合,血液ガスでHb-CO濃度を確認する。
□髄膜炎,あるいは頭部CT・MRIで異常所見を認めないがSAHを除外すべき場合には,腰椎検査が必要である。髄膜炎の場合は迅速検鏡に加えて培養検査を行い,転移性脳腫瘍などを疑う場合は細胞診も提出する。また,脳炎を疑う場合は,余分に検体を取り置きしておく。
□問診・診察を過信すること,反対に診察なしに頭部画像検査を行うことは厳に慎む。
□疾患に特徴的な頭痛の様式でないという理由でその疾患を除外しないようにする。たとえば,片頭痛の36%にしか前兆がないのでその疾患を除外する,直接外来受診(walk-in)で受診した頭痛を軽症と考え,安易に一次性頭痛と決めつける,などである。
□心電図:ST偏位など心電図異常があるときにACS(acute coronary syndrome)評価を行い,頭蓋内疾患の検査を後回しにすると,SAHなどの見逃しが起こる。
□腰椎穿刺:発症早期のキサントクロミーは認めにくいため,注意が必要である。なお,12時間以降から感度100%となる。また,traumatic tapの場合,判断に迷う。髄膜炎を疑い腰椎穿刺を行う場合,痙攣・巣症状などがあれば腰椎穿刺前に頭部CTを撮影し,頭蓋内圧亢進がないことを確認する。
□頭部CT:貧血,時間経過でSAHの出血病変が認めにくくなるため,注意が必要である。なお,発症12時間までで感度100%,12~24時間で感度93%である。また,脳底槽,大脳円蓋部にのみ認めるSAHは見逃されやすい。
□気道呼吸の安定化,頭蓋内圧減圧のために15~30°程度のギャッジアップ,頭蓋内圧亢進時に必要に応じて高浸透圧利尿薬の投与を行う。過換気に関しては,脳ヘルニアなど切迫する頭蓋内圧亢進時には行うが,ルーチンに行うことは避けるほうが好ましい。
□痙攣時はジアゼパムの投与,不穏時は鎮静薬の使用を考慮する。
□SAHを認めたときは,鎮痛鎮静,降圧を行い,動脈瘤などの出血源精査のため頭部3D-CTAあるいは血管撮影を行う。
□脳神経外科にコンサルトして,適応に応じて開頭クリッピング術,血管内治療を行う。SAHの降圧目標,鎮痛・鎮静の薬剤選択などはそれぞれの病院の脳神経外科医師と事前に話し合うことが重要である。
□脳出血の収縮期血圧は140mmHg以下を目標とする。
□出血部位が非典型的,あるいは若年の場合,脳動静脈奇形などの血管奇形や腫瘍内出血の可能性を考え,頭部MRIを追加する。
□抗プラスミン薬の投与は議論のわかれるところであり,優先的に投与する必要はない。
□早急に抗菌薬投与を行う。その際は,年齢や既往歴を考慮した抗菌薬を選択する。
□病歴や診察,各種検査で一次性頭痛を疑うとき,下記処方で経過観察とする。片麻痺や嘔吐などを認めたときは,受診するよう説明しておく。
1) Edlow JA:Emerg Med Clin North Am. 2003; 21(1):73-87.
▶ 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会, 編:脳卒中治療ガイドライン2015. 協和企画, 2015.
▶ 日本救急医学会専門認定委員会:救急診療指針. 改訂第4版. へるす出版, 2011.
▶ 太田富雄, 他, 編:脳神経外科学. 改訂11版. 金芳堂, 2012.
▶ 林 寛之:ステップビヨンドレジデント2 救急で必ず出合う疾患編. 羊土社, 2006.
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