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化学損傷[私の治療]

No.5260 (2025年02月15日発行) P.42

黒木雄一 (地域医療機能推進機構中京病院災害医療センター長)

登録日: 2025-02-18

最終更新日: 2025-02-12

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  • 化学物質が皮膚や粘膜に接触して起こる損傷であり,さらに体内に吸収されることにより臓器障害が起こりうる。付着した物質をできるだけ早く除去することが治療の基本である。

    ▶病歴聴取のポイント

    原因物質の種類や濃度,接触した時間,現場での洗浄の有無を聴取する。化学物質を取り扱う会社は,安全性データシート(safety data sheet:SDS)を作成し,毒性や発火性,爆発性,応急処置などの情報を提供することが義務づけられている。労働災害の場合,救急車応需や受診問い合わせの連絡を受けた時点で,SDSを必ず持参するよう指示する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【安全確保】

    まず,診察の前に,標準予防策を施し,医療スタッフの安全を確保する。

    【バイタル】

    バイタルサインの異常としては,意識障害(フェノールなど)が起こりうる。広範囲の皮膚の損傷が起こると,広範囲熱傷と同様にショックとなる。

    【身体診察】

    皮膚の所見は熱傷に類似するが,原因物質に特徴的な皮膚所見もある。酸であれば,脱水作用・凝固壊死による乾燥した硬い痂皮を形成する傾向があるのに対し,アルカリでは湿潤した痂皮や水疱となることが多い。

    眼症状としては,流涙,角膜混濁,角膜潰瘍,結膜の発赤や浮腫,眼痛,眼瞼腫脹などがみられる。

    呼吸器症状としては,強酸,アンモニア,次亜塩素酸,シアンガスなどの吸入による気道症状が生じうる。咳嗽,喀痰増加,嗄声,肺水腫による低酸素血症がみられる。

    消化管症状としては,口腔内から腹部の疼痛,悪心・嘔吐を認める。消化管穿孔による縦隔炎や腹膜炎を合併しうる。遅発性に消化管狭窄が起こりうる。

    WEBコンテンツ「jmed 84 ジェネラリストはここを押さえる! 日常生活に潜む急性中毒24の対処法」

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