本稿では,AHA(American Heart Association) の蘇生ガイドラインや洞不全症候群のRubenstein分類に基づき,徐脈を「50回/分以下」とする。徐脈に伴う症状や徴候を認める患者を「症候性徐脈」として扱い治療対象とする。洞徐脈と徐脈性不整脈にわけて対処するが,治療対象となるのは徐脈性不整脈のことが多い。可逆性の原因・誘因(薬剤,電解質異常など)があれば除去する。一過性の徐脈であっても,治療対象となることがある。
徐脈により十分な心拍出量が維持されないと,脳虚血による,めまい,眼前暗黒感,立ちくらみ,失神(アダムス・ストークス発作)や,心不全に伴う易疲労感,労作時息切れ,動悸などの症状が引き起こされる。このような症状を主訴とする患者では,症状の発生頻度,持続時間,発生時の状況,誘発原因などを聴取する。
薬剤による影響を必ず念頭に置き,内服薬〔ジギタリス,β遮断薬,非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬,抗精神病薬,抗てんかん薬(カルバマゼピン),抗うつ薬,コリン作動薬,ならびに市販薬も含む〕の確認を怠らない。
甲状腺機能低下症の既往にも留意する。
重篤な徴候としての血圧低下,種々の呼吸苦,頸静脈怒張,肺うっ血や下肢浮腫等の心不全症状,それに伴う酸素化の低下がないかを確認する。意識障害を伴っている場合,Glasgow Coma Scaleによる意識レベルの評価と瞳孔不同の有無を確認する。
徐脈に伴うショック徴候の有無を確認する。皮膚の湿潤・冷感,網状皮斑などがみられればショックと判断し,速やかに治療を開始する。
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