□急性化膿性膝関節炎などの骨軟部組織感染症であれば,敗血症からショックとなるので,直ちに全身状態の安定化を図る。
□ライン確保と血液培養2セット採取,起因菌同定のために関節液のグラム染色,組織検査,結核検査,などを速やかに行う。
□これらと同時に,抗菌薬の経静脈投与を開始する。セファゾリンは健康成人ではブドウ球菌とレンサ球菌をカバーする。セフトリアキソンは性的活動性が高い者で淋菌を,高齢者ではブドウ球菌とレンサ球菌,グラム陰性桿菌などもカバー
する。
□局所の安静(rest安静,icing冷却,compression圧迫,elevation挙上:RICE)を保つ。
□病態に応じて整形外科,リウマチ膠原病内科など適切な科に速やかにコンサルトする。
□痛みに対しての対応も遅滞なく行う。痛風・偽痛風ではNSAIDsを内服処方する。関節液貯留による疼痛の場合,関節液の十分なドレナージにより疼痛の軽減が期待できる。
□多関節痛の場合,自己免疫疾患やウイルス性疾患であれば個々の疾患に対する治療法を実施する。
□X線:外傷や腫瘍,代謝性骨疾患などにおいて有用である。原則として2方向・両側で撮影する。外傷,病的骨折,軟部組織(腫瘍,異物),関節間隙の狭小化,石灰沈着などを評価する。
□CT,MRI:外傷や急性化膿性関節炎・骨髄炎の診断に有用な場合がある。
□関節穿刺による関節液の観察は,感染の有無や結晶の同定に必要である。関節液貯留をみたら,積極的に穿刺を行う。
□評価の仕方は表21)に示した。特に化膿性関節炎を疑う場合には,菌同定のためにも必ず穿刺し,培養提出する。
□炎症や感染の指標として,白血球数,CRPを測定する。
□抗核抗体や抗ds-DNA抗体(全身性エリテマトーデス:SLE),関節リウマチ,IgM抗体価測定(パルボウイルスB19感染症)など各種検査は診断に有用である。
□ただし,尿酸値が高くても必ずしも痛風であるとは診断できないし,また正常域であっても完全に除外はできない。診断的価値は限定的である。
□高齢者では,関節痛の訴えが乏しいことがあるので注意が必要である。
□発熱や局所の熱感のないことも稀ではなく,ERで感染を疑った場合には積極的に関節穿刺することが重要である。
□個々の疾患に応じて,それぞれの治療法を各専門科で実施することになる。関節リウマチ,SLEなどの自己免疫疾患は整形外科的疾患が多いが,その他内科,アレルギー膠原病科,さらには精神科領域の場合もある。
1) Tintinalli J, et al:Emergency Medicine:A Comprehensive Study Guide. 6th ed. McGraw-Hill Professional, 2003, p1795-801.
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