□失神性めまいで,その原因が心原性であった場合,危険な不整脈が出現することがある。また,回転性や浮動性めまいでは,脳の主幹動脈の狭窄や閉塞が原因となっていることがある。これらはいずれも専門性の高い対応が必要であり,早急に専門科へのコンサルトが必要である。
□頭部CT,胸部X線写真を確認する。発症早期の急性期脳血管障害を否定するために,頭部MRIやMRAの必要性も考慮する。その他,心機能をみるために心臓超音波検査も必要である。
□貧血や電解質異常の有無を確認する。
□失神性めまいの場合,その原因として起立性低血圧のほか,不整脈発作に伴う一過性の血圧低下が考えられるため,8時間程度のモニター心電図監視や,ホルター心電図でのチェックが必要なこともある。
□Frenzel眼鏡で検査して,眼振がないにもかかわらず浮動性めまいを訴えて歩行ができないめまい,眼振が垂直方向に出現しているめまい,注視を指示した場合のみ眼振が出現するめまい(注視眼振)は,中枢神経系に異常をきたしている疾患である可能性が高い。
□これらにはあてはまらないが,後半規管型BPPVに典型的な眼振(表2)1)が出現していない場合には,椎骨動脈解離などの疾患の可能性を考えて頭位をいたずらに動かさず,安静臥床を保って専門科にコンサルトするべきである。
□失神性めまい:原因疾患への特異的治療が必要である。
□浮動性めまい:頭部画像検査(CT,MRI)で異常がみられた場合には,その治療が必要である。画像検査で異常がない場合,後頸部や肩周囲の筋肉の緊張亢進が原因のこともある。筋肉弛緩効果のある抗不安薬の処方や,これらの筋肉のマッサージなどが有効なこともある。
□浮動性めまい:エチゾラムを処方するが,1日1回の投与で効果がみられなければ1日2回へ増量する。場合によっては,1日3回とすることもある。
□回転性めまい:頭部画像検査(CT,MRI)で異常がみられた場合には,その治療が必要である。回転性めまいと蝸牛症状を伴うものとして,突発性難聴やメニエール病がある。いずれも耳鼻科への紹介が望ましいが,救急外来などで遭遇した場合には次のような対応がある。悪心や嘔吐が強い場合には,メトクロプラミドを静注する。
□メニエール病:7%炭酸水素ナトリウムの点滴静注,イソソルビドの内服により効果がみられることがある。
□BPPV:眼振が後半規管型BPPVに典型的である場合は,BPPVと診断できる。通常,数時間で自然軽快するため,補液を行い安静臥床で経過観察をするが,悪心や嘔吐が強い場合には,メトクロプラミドの静注,細胞外液の点滴静注を行う。なお,7%炭酸水素ナトリウム40~250mLの点滴静注が有効であるというエビデンスはない。また三手目としてEpley法を試みるが,実施にあたっては良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン(医師用)1)を参照する。ただし,施行に際しては専門的知識が求められるので,安易な実施は控えるべきである。
1) 日本めまい平衡医学会診断基準化委員会:Equilibrium Res. 2009;68(4):218-25.
2) 中森知毅:今日の救急治療指針. 第2版. 杉本 壽, 編. 医学書院, 2011, p78-81.
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